ジュビロ磐田は12日、J2第11節の大宮アルディージャ戦に臨み、2-2で引き分けた。熱帯夜のハードなゲームで、CBの伊藤洋輝は勝ち点1を持ち帰ることに大きく貢献。自身のJ初ゴールを決め、試合終了間際の同点弾の起点になった。

上写真=伊藤が1-1に追いつくミドルシュートを放った場面(写真◎J.LEAGUE)

■2020年8月12日 J2リーグ第11節(@NACK5/観衆3,029人)
大宮 2-2 磐田
得点:(大)大山啓輔、オウンゴール
   (磐)伊藤洋輝、ルキアン

センセーショナルなJ初ゴール

 188㎝とサイズがあって、技術が高い。しかも左利き。今季開幕後にボランチからCBにポジションを移した伊藤洋輝は、この日も最終列で大きな存在感を示した。

 サイドを変える対角のパスや、攻撃のスイッチを入れる縦パスの正確性は特筆ものだ。リーグを見渡しても、いや国内を見渡しても、CBでこれほど『ボールをうまく扱える』選手はそうはいない。この日もキック技術の高さを随所で見せつけた。

 1-1となる同点ゴールもそうだ。敵陣内での連動した守備からボールを奪うと、山田大記からボールを引き取り、左足を一閃。ゴールまでやや距離があったものの、相手GKから逃げるような球筋で見事にネットを揺らした。

「ヒロキくん(山田)からもらって、いいところにファーストタッチで置けたんで振りました。ちょっとダフりましたけど、良いところに飛んでくれました」

 指揮官も「センセーショナルなゴールだった」と絶賛した一撃は自身のJ初ゴールでもあった。ただ、本人は事も無げに振り返った。相手が引いてブロックを築いていたから、ミドルシュートを狙っていこうと思っていたと、その狙いについてはコメント。状況を的確にとらえる力も、伊藤には備わっている。

 オウンゴールによって再び大宮に突き放され、90分に退場者を出して絶体絶命のピンチを迎えていた後半アディショナルタイムには、チームを救う2度目の同点弾の起点になった。「(大森)晃太郎くんに積極的に縦パスを入れてほしいと言われていた」と話したが、敵の間を縫うように鋭い縦パスを届けて、大森のクロス→ルキアンのヘッドにつなげている。

 そのパスにスピードが無ければ、相手に引っかかっていたかもしれず、正確でなければ大森が狙いすましてクロスを上げる時間を作れなかっただろう。これまた伊藤の持ち味が存分に発揮されたビッグプレーだった。

 守備面はまだまだ成長過程にあるものの、攻撃面はすでにトップクラスの輝きを放つ。最終ラインからゲームを動かす伊藤の存在は、今季の磐田の大きな武器になっている。

取材◎佐藤 景 写真◎J.LEAGUE