上写真=熱帯夜に激しい攻防を繰り広げた大宮と磐田。勝ち点1を分け合った(写真◎J.LEAGUE)
■2020年8月12日 J2リーグ第11節(@NACK5/観衆3,029人)
大宮 2-2 磐田
得点:(大)大山啓輔、オウンゴール
(磐)伊藤洋輝、ルキアン
・大宮メンバー◎GKフィリップ・クリャイッチ、DF畑尾大翔、河本裕之、ヴィターリス・マクシメンコ、渡部大輔、MF小島幹敏(80分:石川俊輝)、大山啓輔(70分:小野雅史)、翁長聖、イッペイ・シノヅカ(80分:黒川淳史)、奥抜侃志(60分:近藤貴司)、菊地俊介(70分:戸島章)
・磐田メンバー◎GK志村滉、DF小川大貴(86分:宮崎智彦)、藤田義明、伊藤洋輝、櫻内渚、MF山本康裕(86分:今野泰幸)、山田大記(74分:上原力也)、松本昌也(46分:ルリーニャ)、大森晃太郎、FWルキアン、中野誠也(46分:小川航基)
前半は大宮、後半は磐田が持ち味を発揮
前半だけを見れば、完全に大宮のペースだった。タイトな守備と縦に速い攻撃で磐田ゴールに何度も迫った。ポセッション率は38%対62%と磐田に譲ったが、枠内シュート数は7対3。効率の良い攻めが出来ていた。
人を捕まえてパスミスを誘い、マイボールにしたら一気に攻めていく。この日、久々に先発したボランチ大山の前方への配球もよく、リーグ再開後の過密日程を鑑みて目指すべきスタイルに修正を施した大宮の持ち味を存分に表現していた。機に臨み時に応じてゴール前にボールを入れていくことでチャンスを創出する戦い方だ。
43分、そんな大宮に、史実に刻むべき美しいゴールが生まれる。大山が自陣で相手ボールをインターセプトし、GK志村が前に出ていることを確認すると、すぐさま右足を振り抜く。60メートルをゆうに越える距離からシュートを放ち、見事にネット揺らした。チームの前への意識、大山の仕事を全う意志を象徴するかのようなゴールだった。
だが、後半は状況が一変する。人の配置を変えた磐田がペースを握り返したのだ。前半、左SBを務めた櫻内と右SBの小川が入れ替わり、左SHだった大森が右へ、そして左SHには交換投入されたルリーニャが入った。サイドの攻防で相手を押し込むと、好機を創出し始める。そして60分、これまた美しいゴールで磐田が同点に追いついた。山田のパスを受けた伊藤が相手の寄せが甘いと見るや、左足を一閃。ミドルシュートをゴールに突き刺した。
ホームで3戦3勝の無失点と、ここまで難攻不落であった大宮からゴールを奪ったことで、意気が上がる磐田だったが、思わぬ落とし穴が待っていた。伊藤の鮮やかなミドルで同点としたものの、オウンゴールによって2点目を献上してしまう。戸島が黒川に出したパスをカットしようと小川大が伸ばした足にボールが当たり、そのままゴールへと吸い込まれてしまった(81分)。
この時点で残り10分を切っており、さらに90分にはルリーニャがラフプレーで退場。1人少なくなり、磐田の敗色は濃厚と思われたが、それでもアウェーチームは諦めていなかった。
90分+5分、同点ゴールをスコアした伊藤が大森に鋭い縦パスを入れ、大森がすぐさま狙いすましてクロスを上げる。待っていたの、ルキアン。マクシメンコに競り勝ち、GKの届かない場所にヘディングでボールを送り込んだ。
「選手まで最後まで戦ってくれた。諦めなかった。退場者にも関わらず。大宮は今日までホームで失点していなかったし、勝ち点も与えていなかった。そんなところでわれわれが気持ちを見せて勝ち点1を持ち帰れることは非常に大きい」
磐田のフベロ監督はそう言って選手を称えた。対する大宮の高木監督は「最後に追いつかれたのは残念ですが、内容としては前節よりも良くなっていたと思います。やろうとしていることは、よく見えたと思っています」と、内容に一定の評価を与えながらも、土壇場でつかみ損ねた2ポイントを悔やんだ。
前半は大宮、後半は磐田。互いに持ち味を発揮したゲームだが、この日、手にした勝ち点1をよりポジティブに受け入れられたのは、最後の最後に追い付いた磐田の方だった。
現地取材◎佐藤 景 写真◎J.LEAGUE