明治安田生命J2第10節でジェフユナイテッド千葉に敗れ、今季初の連敗となったFC町田ゼルビア。この試合で人一倍、気を吐いていたのが中島裕希だった。ここ3試合で出場がなかったが、相変わらずのはつらつさで引っ張った。

上写真=高温多湿の中でも中島は生き生きと走り回った(写真◎J.LEAGUE)

■2020年8月9日 J2リーグ第10節(@Gスタ:観衆1,478人)
町田 0-2 千葉
得点:(千)田口泰士、米倉恒貴

「守備も攻撃もチームのファーストに」

 1984年生まれの36歳。年齢で人を決めつけるのはいいことではないが、それにしてもこの大ベテランにこそ「はつらつ」の言葉がよく似合う。

 ここ3試合、出番がなかったが、それでいまさら気持ちが萎えるほど青臭くはない。「自分が出たときにはやってやろうという気持ちで(出ていなかった)試合も見ていましたし、裏を狙う選手があまりいないと思っていたので、自分が出たらタイミングよく裏を狙ったり、前で収めることを意識しました」

 狙いは、表も裏も、だった。確かに、斜めに相手のラインを突破するランを繰り返すことで相手守備陣を引き連れて動かしていくし、逆にDFの手前に下りてきてボールを受けてから展開もしていった。「嫌な存在」であり続けたのは、さすがだった。

「いつも通り、守備も攻撃もチームのファーストになるイメージでやろうという意気込みでやりました」

 象徴的なのは17分だ。最終ラインから平戸太貴が縦パスを引き出してフリックしたボールを最前線で収め、前を向くことで相手DFの飛び込んでくる動きを制すると、左に走ってきた平戸にリターンパス。平戸はここから優しく左に流し込み、マソビッチのシュートを導くのだが、GKにブロックされてしまった。それでも、平戸の技巧に瞬時に対応しつつ、ポスト役になってボールを素早く動かした中島のプレーがビッグチャンスを生み出した。

「コンビでゴール前まで行ったときも裏を取れていたし、前半は自分たちのペースだったと思います。最初の20分までに点を決めていたら違った展開になっていたと思います。いいときに点が取れるようにしなければ」

 ランコ・ポポヴィッチ監督もベテランを起用したことによる成功を感じている。

「持っているものをしっかり出してほしいと思って起用したが、それに応えてくれた。しっかりキープしてくれたところが良く、ボールを収めて起点になって、そこから落としやパスの精度もとても良かった。彼を起点にいくつかいいチャンスを作れたし、背後に抜ける動きという得意な部分を見せてくれた。これまでチームに少し欠けていた前線で収めるプレーで安定感をもたらしてくれた」

 5連戦の最初に、やはり大きな存在感を見せつけた「嫌なやつ」。味方にとっては、こんなに最高な男はいないだろう。

取材◎平澤大輔 写真◎J.LEAGUE