上写真=高度なテクニックとセンスを宿す為田。攻撃のキーマンだ(写真◎ジェフユナイテッド千葉)
「ドリブルやワンツーで変化を」
J2第7節ヴァンフォーレ甲府戦と第8節モンテディオ山形戦のアウェー2連戦で先発に復帰したのが為田大貴。4-4-2の配置において左サイドハーフで躍動していて、山形戦は0-0だったものの連敗脱出という成果はあった。尹晶煥監督は改めて「ホームで勝ち点3を、アウェーでは勝ち点1かそれ以上」の哲学を選手に植え付けているが、今回は1を手土産に千葉に戻ってきた。
「連敗した中での試合は難しいものになりましたし、アウェーで勝ち点を持って帰るのは今後に大事になってくると思います。この勝ち点1が昇格につながったりする状況が生まれるように、これから勝ち点を積み上げていきたいと思います」
この「1」にどんな意味があるのかは、最後まで戦った上で分かること。いま何か特別な意味を付け加えようとするのではなく、振り返ったときに大事な意味が浮かび上がってくるようになるために、ここからしっかり戦っていくべきだ。J1・J2で250試合近く戦ってきた経験から、そんな思いを伝えようとしているようだ。
尹晶煥監督のスタイルでは、まずタイトな守備が要求される。その意味ではアウェーで無失点の0-0は悪くはない。
「守備のところはうまく守れたと思います。もちろんピンチはどの試合でもあることなので、みんなで乗り越えて、次に相手にチャンスを与えないというゲームは少しずつできています」と一定の手応えは得ている。
逆にスコアレスの結果は、攻撃面からは物足りなさが残る。「攻撃のところでやりたいこと、カウンターの精度は自分を含めて低かったと思います。うまくボール奪取はできているので、次は自分たちの得点につながればいい」
そのための方策として「僕たちはクロスが多いと思うので、誰がどこに入っていくのか、スピード感をもって入っていくことをもっとしなければ」とチームに求めていく。これに近いシーンがあって、70分のビッグチャンスは左からの安田理大のクロスがきっかけだった。
クロスボールに対しては相手のDFが先に触ってヘッドでクリアされてしまうのだが、いち早く落下点に入ったのが為田だった。ゴールまでの距離は20メートルほど。落ちてくるところを右足でパチンと叩いた。右足の先の外側でボールの左下をこするようにして足をコンパクトに鋭く振ったことで、ボールに強烈な右回転をかけ、右に逃げていくような弾道で狙った。ポストぎりぎり、キーパーの伸ばした手の先を抜けるように飛んでいった。ここは残念ながらキーパーに弾かれてしまったのだが、技術レベルの高さを印象づけるキックだった。
もちろんこれからもこの技巧をチームの攻撃に還元していく。「迫力とスピード感を持ってつなぎながら攻撃できるシーン増やせれば。全体がゆっくりしたときに、自分がドリブルやワンツーで変化をつけられればいいと思っています」
次節の相手、ザスパクサツ群馬はまだ1勝と苦しんでいる。千葉は再開後のホームで連敗中だから、ここで気持ちよく勝ってサポーターに喜びを届けたいところだ。
「群馬も勝ちが遠のいているというか、良い状況ではないと思うので、相手がうまくいっていないところをうまく突いていくことが大事だと思います。自分たちが求めている形をうまく次の試合で体現できれば、勝ち点3は取れると思います」
そのためにこそ、為田のテクニックはあるはずだ。