平尾壮が古巣のFC町田ゼルビア戦を前に口にした「死んでも負けたくない」。岡村大八も次の松本山雅FC戦を前に同じ言葉で自分を奮いたたせる。情熱を前面に、しかしどこまでもクールに語る若きセンターバックの決意とは。

上写真=センターバックの岡村。町田戦で左目をぶつけて内出血しているが、元気!(写真◎ザスパクサツ群馬)

「お前はプロじゃない」

「(平尾)壮の言い方を借りれば『死んでも負けたくない』試合ですよね」

 ザスパクサツ群馬のセンターバック、岡村大八。2019年に群馬に加入してプロとしての一歩を刻んだのだが、自分の甘さを思い知らされることになる。「お前はプロじゃない」。そう指摘してくれたのが、当時の布啓一郎監督である。今年は松本山雅FCを率いている。群馬の次節の相手だ。

 厳しい評価で目が覚めた。その後、8月からJFLのテゲバジャーロ宮崎に期限付き移籍して自分に向き合った。布監督から言われた言葉を思い出しながら。

「準備の部分についてはすごく言われました。ハッとしたというか、足りなかったなと。良くないプレーをしたあとの振る舞いについても言われることが多くて、それからはミスのあとのプレーですごく変わりました」

 今季は開幕からフルタイム出場、渡辺広大とのコンビで4バックのセンターを務めている。そして前節のモンテディオ山形戦でうれしい初勝利を挙げた。自身にとってもJ2初勝利である。「めちゃくちゃうれしかったですね!」と顔をクシャクシャにして喜ぶが、「前半、特に相手が良くない時間帯に3点取れたのはDFとしては助かりました」と分析は冷静だ。

 中でも23分に決めた2点目が理想的だという。相手の最終ラインにあるボールを高い位置からプレスをはめていき、奪ってから素早く短く前に出し、林陵平がフィニッシュ、ブロックされたボールを中山雄登が打ち、GKがはじいたところを田中稔也が押し込んだ。連動した守備、素早い攻撃、連続したフィニッシュ。「ああいう形が出てくれば、これから先も戦いやすくなって勝利が見えてきます」と納得の表情だ。

 守備については1失点の場面以外は「じっくり守れていた」と自己評価する。じっくり、とはどんなスタイルなのだろうか。

「相手が2トップ2シャドーだったので、2シャドーのところに僕たちが食いつくと2トップを使われて簡単にはがされてしまいました。2シャドーのところにできるだけ食いつかないようにして、サイドに追い込んで取る部分が徹底されていたんじゃないかと思います。何度か食いついて出された部分がありましたが、それからは修正して食いつかずに守れていたと思います」

 そのために見せた攻撃陣の守備への貢献に、とても感謝している。チームがうまく回り始めた証拠だ。

「FWの守備の追い方とスイッチ、サイドの守備がすごくよかったので、そこを継続的にできれば攻撃の時間も増えてチャンスも広がると思います」

 絶対に負けたくない試合を前に、初勝利とチーム全体の守備に手応えを感じた若きセンターバック。「成長を見せたいですし、1対1で負けたくありません。失点をゼロで抑えて複数得点で完勝したいです」。恩師への感謝は、勝利で示すつもりだ。