この連載では再開後のJリーグで注目すべきチームやポイントなど、見所を紹介していく。連載第6回目はJ2のV・ファーレン長崎を取り上げる。5節を終えてJ2の首位に立つチームには、他にはない特長があるーー。

ウチにはタマがある

チームの中心的な存在である秋野央樹(写真◎J.LEAGUE)

 いや、戦術だけではない。用兵の手際も見事。何しろ「使えば当たる」のオンパレードだ。勝負どころで投入した選手たちが次々とゴールに絡んで、ことごとくケリをつけていく。まるでカジノのジャックポット(大当たり)みたいだ。

 うちにはタマがある――とは指揮官の弁。確かに凄い。業師ルアン、大砲ビクトル・イバルボ、巨人カイオ・セザールが<巧さ・高さ・強さ>で違いをつくり、ゴールへの道を切り拓く。疲労が溜まったところで彼らを相手にしなければならないのだから、守備側はたまったものではない。

 本来ならスタメンで使いたい傭兵部隊をサブに回すあたりは指揮官の深謀遠慮。シビアな連戦に伴うコンディションの問題も大きいのだろうが、別の思惑もありそうだ。

 1つは守備である。とりわけ、激しいプレスの掛け合いでは走力や運動量に加え、周囲と密接にリンクする連動性が不可欠だ。前線のイバルボやルアンには体力面や言葉(対話)の問題を含めた負荷がかかりやすい。ならば、相手のプレー強度がガクンと落ちる終盤に切り札として使ったほうが「現状では効果的」というわけである。

 このまま首位を走り、対戦相手が警戒して、やや構えて守るケースが増えてきたらスタメン起用という算段か。どの道、夏本番ともなれば、こちらもあちらもプレスの強度は下がりやすい。自ずと起用法も変わっていくはずだ。

 過酷な連戦では選手層の厚さがモノを言うが、それこそ望むところ――と、指揮官は自信を隠さない。なるほど熟練者から新人、前線から守備陣に至るまで計算できる駒がそろっている。琉球戦ではバックスの柱として攻守に出色の働きを演じてきたベテランの角田誠を「温存」する余白があった。総力戦に強い陣容が整っているわけだ。

 派手さはないものの、現状では死角らしい死角が見当たらない。僅差勝負に競り勝ち、コツコツと勝ち点を積み上げていく安定感はJ2随一だろう。そうかと言って、やすやすと首位を守れるほど甘いリーグではないが、テグ色に染まった今季は一味も二味も違うはずだ。

 少なくとも、いまの長崎はそう映る。