7月15日、明治安田生命J2リーグ第5節が開催された。ここまで未勝利の東京ヴェルディがホームにヴァンフォーレ甲府を迎えた一戦は、4-2で東京Vが快勝。信じたスタイルを貫くチームが理想的な戦い方で、今季初勝利を手にした。

上写真=チームの4点目を挙げた若狭(左)を森田と藤田が祝福する(写真◎Getty Images)

■2020年7月15日 J2リーグ第5節(@味スタ)
東京V 4-2 甲府
得点:(東)井上潮音2、井出遥也、若狭大志
   (甲)今津佑太、山田陸

・東京Vメンバー◎GKマテウス、DF若狭大志、高橋祥平、平智広、奈良輪雄太(68分:福村貴幸)、MF小池純輝(68分:山下諒也)、佐藤優平(46分:森田晃樹)、藤田譲瑠チマ、井上潮音、井出遥也(75分:新井瑞希)、FW端戸仁(88分:中野雅臣)

・甲府メンバー◎GK岡西宏祐、DF今津佑太、山本英臣、中塩大貴、藤田優人、MF山田陸、中村亮太朗(64分:ハーフナー・マイク)、荒木翔、松田力(72分:宮崎純真)、泉澤仁(72分:中山陸)、FW太田修介(64分:ドゥドゥ)

適材適所の選手起用も勝因

 東京ヴェルディが追い求める形が味の素スタジアムのピッチに描き出された。これまでゴール欠乏症に苦しんでいたのが嘘のよう。相手の間にポジションを取り、テンポよくボールを回し、そしてゴールを重ねていった。

 先制点をスコアしたのは井上潮音だ。スローインの流れからパスを8本つなぎ、相手MFとDFの2ライン間で端戸仁がボールを引き出すと、同様にライン間にポジションを取っていた井出遥也にダイレクトで、はたく。相手DFのスライディングを冷静にかわした井出は、すぐさまスルーパス。最後はDFの間をすり抜けた井上がGKの位置を見て冷静にゴールへと流し込んだ。

 前半終了間際に相手CKの機会に監視を緩めて失点し、同点に追いつかれたが、求めていた形でゴールを挙げたことが東京Vの選手たちの背中を押す。これまでのように失点でリズムを崩すことはなく、後半に入ると、攻撃は加速した。相手の『間』にどんどん選手が入り込み、ボールを呼び込んで好機を生んでいく。58分にはサイド攻撃からまたも井上がネットを揺らし、66分には先制点をアシストした井出、75分にゴール前まで攻め上がっていた右サイドバックの若狭が決めて、その差を広げた。虚を突かれて78分に失点したものの、その後はしっかり時間を使って勝負をものにした。

「われわれは70%以上の保持率でゲームを支配をしてやる中で定位置というものを大事にしているんですが、ある意味でフィニッシュゾーンのところは、定位置を壊してやっていい。その意図だったり意味を選手がよく理解してやってくれたと思います」

 これまで練習では、多くの時間を「立ち位置」の理解に費やしてきた。その結果としてベースはできつつあり、実際にボール保持率は上がっている。ただ一方で選手がその枠組みにとらわれて自身の持ち味を出し切れない側面もあった。最後の部分、つまりフィニッシュワークに関しては「個々のアイディアを存分に出してほしい」というのが永井監督の考え方。そこで、この試合に向けたミーティングでは、あらためて選手にその点を強調したという。

 そしてもう一つ、チームを好転させたのが起用法だ。低い位置や永井監督が言うところの「フロントボランチ」(=トップ下、インサイドハーフ)でプレーすることが多かった井上はこの日左サイドワイドに入って得点をより強く意識し、フロントボランチに入った井出は、最も得意とする真ん中でゴールに絡む仕事を積極的にこなした。2人も「やりやすかった」と口をそろえた。適材適所の起用も、勝利を呼び込むことになった。

 立つべき位置に立って円滑なビルドアップを実現し、相手ゴールまで3分の1のゾーンに入ったらアイディアを積極的に出していく。シュート数は16対5。これまで連動できていなかった二つの要素が甲府戦では実にスムーズにつながり、圧倒的な内容で今季初勝利を挙げた。むろん、この1勝だけですべてが好転するわけではないだろうが、少なくともチームが自信を深めたのは間違いない。

 次戦は中2日で臨むジェフユナイテッド千葉戦。手にした自信を確信に変えるために、永井ヴェルディは信じるスタイルで、連勝に挑む。

現地取材◎佐藤 景 写真◎J.LEAGUE