6月27日のJ2再開初戦でヴァンフォーレ甲府のホームに乗り込んだのがアルビレックス新潟。派手なシーソーゲームを繰り広げた主役の一人が、2ゴールの渡邉新太だ。「自分の形」と表現した先制弾を導いたものとは。

上写真=2試合連続ゴールを決めた渡邉(写真◎J.LEAGUE)

■2020年6月27日 J2リーグ第2節(@中銀スタ)
甲府 3-3 新潟
得点:(甲)ドゥドゥ2、太田修介
   (新)渡邉新太2、シルビーニョ

フィーリングが合っている

 練習は、やはり嘘をつかないのだ。

「練習通りに自分の形が出せたと思います」。19分の先制点と、逆転されたあとの前半アディショナルタイムの同点弾。再開初戦のこの2ゴールは、4カ月前、2月23日のJ2開幕戦に続く2試合連続弾でもある。

 鮮やかな2ゴールにもさばさばと振り返るしかなかったのは、後半アディショナルタイムに3−3に追いつかれて勝ちを逃したからだ。「勝てた試合、でしたね」とインタビューの第一声が悔しさを引き立てる。

 それでも2つのゴールはしっかりと文字に残しておきたいほどの美しさだ。先制点は右サイドのロメロ・フランクと新井直人が仕掛けた縦のワンツーから、ロメロ・フランクが中の渡邉新に横パス、一度足の裏でボールを抑えて相手の足を止めてから、ファビオをポスト役に使ってリターンをもらい、右足できれいに左隅のコースを突いた。前後のワンツーを2セット連続させつつ、ボールコントロールで相手のリズムを狂わせてパスコースを突き、見事なコースに流し込む。この一連のモーションが「練習通り」だというわけだ。

「受けて、中に入れて、落として、もらって、シュート、というのは自分の形でもあるし、これまでも何回か決めています。いつも全体練習の後で練習している形なんです」

 2点目もコンビネーションの妙とテクニックの融合だ。ボランチの秋山裕紀のミドルパスが相手の頭越しに飛んできて、走り込んでいた渡邉新にピタリ。これをぎりぎりまで足元に呼び込んでおいてタメを作っておいてから、そのままワンタッチでゴールにパスをするように送り込んでいる。

「秋山からいいボールが来てワンタッチで決めましたけど、練習から(自分の)動き出しと(秋山の)パスのフィーリングが常に合っていて、今日も試合前に口酸っぱく裏を狙ってくれと言っていて、いい形でもらえました」

「1点目はもう感触が良くて、2点目はキーパーがちょっと触っていて少し怖かったですけどね」

 追いつかれて淡々としているせいもあるが、それでも冷静に自分の技術を振り返る顔つきは男臭く引き締まる。ピッチの上で誰よりも労を惜しまずプレスを掛け、パスコースに顔を出し、無駄走りに見えて実は相手を惑わすおとりになっていて、そして自分でもゴールを決めてみせる。その冷静さと躍動感は、もはやエースのそれではないだろうか。

 だが、渡邉新自身がまだそれを認めない。

「あと一つ、二つチャンスがあった。それを決めるかどうかのところが課題です」

 確かに、3−3に追いつかれたあとの45+5分、ペナルティーエリア内に詰めていた渡邉新の足元に、相手のクリアミスがこぼれてくるビッグチャンスがあった。押し込むだけ。決めれば4−3にできる。その場面で左足インサイドで狙ったのだが、ボールはそれよりも上に当たってゴールの上へと流れてしまった。

 真のエースになるために、渡邉新は今日も練習の力を信じて自分の形を追い求めていく。

現地取材◎平澤大輔 写真◎J.LEAGUE