6月27日、新型コロナウイルスの影響で中断されていた明治安田生命J2リーグが、125日ぶりに再開した。東京ヴェルディはホームでFC町田ゼルビアと対戦。注目の東京クラシックは互いの持ち味を出すも決着つかず、1-1の引き分けたに終わった。

上写真=写真左の山下が倒されてPKを獲得。これを藤本が決めて東京Vが土壇場で追いついた(写真◎小山真司)

■2020年6月27日 J2リーグ第2節(@味スタ)
東京V 1-1 町田
得点:(東)藤本寛也
   (町)平戸太貴

・東京Vメンバー◎GK柴崎貴弘、DF若狭大志、高橋祥平、平智広、奈良輪雄太、MF小池純輝(46分:山下諒也)、藤田譲瑠チマ(88分:クレビーニョ)、井上潮音(登録はFW/78分:河野広貴)、MF井出遥也(46分:藤本寛也)、佐藤優平、端戸仁
※実際の並びで表記

・町田メンバー◎GK秋元陽太、DF小田逸稀、深津康太(90分:酒井隆介)、水本裕貴、奥山政幸、MF吉尾海夏(83分:中島裕希)、髙江麗央(90+2分:李漢宰)、佐野海舟、ジョン・チュングン、平戸太貴、FW安藤瑞季

ボールを奪うまではうまくいっていたが…(ポポヴィッチ監督)

 先制したのは、町田。開始早々も早々。3分に見事な形でネットを揺らす。自陣右サイド深い位置で平戸から戻しのパスを受けた吉尾がサイドチェンジ。左サイドでジョン・チュングンが収めると、ピッチを全力疾走で横切ってきた平戸へ。平戸は短いドリブルを挟んで対面するDFのバランスを崩し、エリアの外から迷わず右足を振り抜く。カーブをかけたシュートは、東京VのGK柴崎の手が届かないゴール右隅を射抜いた。サイドチェンジでスペースを突くチームとしての狙い。そしてDFの寄せが甘いと見るやシュートを放った平戸の判断と技術。町田にとっては幸先の良いの得点だった。

 一方の東京Vにとっては悔やまれる1点だったが、その後はホームチームがペースをつかんでいく。リモートマッチのために、永井秀樹監督がピッチサイドから「(佐藤)優平、ライン間ライン間。ポケットポケット!」と敵の間でパスを受けるように要求する声が記者席まで響いた。やがて、その声に呼応するように佐藤ら前線の選手たちがライン間でボールを受け始め、攻めは形になっていく。

 町田を押し込み、25分過ぎからは3連続でCKの機会を得るなど好機を立て続けに手にした。ただ、ネットを揺らすまでには至らない。ポゼッションしてボールは回るものの、最後の一押しが足りない展開が続いた。

 後半、ビハインドを背負う東京Vの永井監督は積極的にカードを切る。46分に藤田と山下を同時投入。それでもスコアが動かないと見るや78分に河野広貴を投入し、人の配置を変えた。それまで右にいた山下が左SHに回り、河野が右SHに入る。なおも圧倒的な支配率で攻める東京V。ソリッドに守って反攻する町田。そしてゲームは終盤も終盤に動く。

 アディショナルタイム2分。左サイドバックの奈良輪雄太の縦パスに端戸がボックス左脇で収め、ボックス内に勢いよく走り込む山下へパス。山下は町田のMF高江の前に体を入れるとファウルされて転倒。東京Vが土壇場でPKを獲得した。キッカーは昨年8月11日以来の公式戦出場だった藤本。ゴール右隅にきっちり決め、95分間の激闘は1-1で決着した。

「相手を呼び込んでボールを奪って背後のスペースをカウンターで突くという狙いだったが、ボールを奪うまではうまくいっていたが、奪ったあとの質が伴わなかった。相手にとって危険な攻撃ができなかった」

 町田のポポヴィッチ監督は良い面と悪い面を率直に振り返った。東京Vの永井監督の総評はこうだ。

「出会い頭に失点してしまって、プランからすると想定外からスタートしましたが、選手たちが自分たちのサッカーをやり通してくれて、最後に一つPKを取って何とか勝ち点1を取れたのは良かった。ただ、ボールを保持してその先というところが。昨年からの引き続きトライしていますが、そこの精度は高めていかないといけない」
 同様に収穫と課題、その両方が出た試合と振り返った。

 リーグ中断期間に「立ち位置の確認」に時間を割いたという東京Vは確かに、開幕戦時よりも成長した姿を示した。しかし、ボールは握るものの、ゴールは遠かった。東京Vがチームのブラッシュアップにかけた時間と同じだけの時間を、町田もまたトレーニングで費やしている。組織的な守備と球際の強さには磨きがかかっていた。

 再開初戦で実現した東京クラシックは、互いに持ち味をしっかり示した一方で課題もはっきりと出た試合となった。数字上、手にしたのは勝ち点1だが、久々の公式戦であること、そしてその内容を考えれば、東京V、町田双方にとって、リスタートとしては悪くない。

現地取材◎佐藤 景 写真◎小山真司