J2のヴァンフォーレ甲府は20日、J3の藤枝MYFCと45分×3本の練習試合を行なった。J2リーグ再開を1週間後に控える甲府は、メンバーを代えながら確認作業を進めた。コンディション面、新戦力の融合、連係面など、収穫と課題を得た。

上写真=小瀬で久しぶりにゴールを決めたハーフナー・マイク(写真◎ヴァンフォーレ甲府)

■練習試合:ヴァンフォーレ甲府対藤枝MYFC
 ・45分×3本(1-1、0-1、1-0)
 合計スコア:甲府 2-2 藤枝
 得点者:【甲】松田力(1本目)、ハーフナー・マイク(3本目)
     【藤】森島康仁(1本目)、岩渕良太(2本目)

3本目に新たな2トップにトライ

 この日の藤枝戦は、甲府にとって再開初戦に向けた重要な予行演習。指揮官はいくつものチェック項目を用意して試合に臨んでいた。そして、いくつもの収穫と課題を手にしている。

「最初の入りというところではすごくよかったと思います。アグレッシブにいけた。そこからゲームをコントロールしながら攻撃にいければよかったんですけど、セットプレーというところで追いつかれて、そこから苦しい状況が続いた。オプションとして3枚でやったりとか、選手の中でバランスが難しいところもあったと思いますけど、いいところと悪いところが見えたゲームだったかなと」

 まず、「いいところ」。一つは、得意の形で先制点が取れたこと。1本目に左サイドバックを務めた内田健太のクロスを、右サイドハーフの松田力がエリア内に進入して右足で合わせた。内田のクロスはチームの武器だが、新戦力・松田の積極性と見事に結びつき、ネットを揺らしている。

 ただ、その後は攻撃で、なかなかいい形を作れなかった。つまりは「悪いところ」が目につく。今季開幕戦で町田相手に攻めあぐね、無得点に終わったが、この日も藤枝の素早い帰陣と組織立った守備の前に沈黙する時間が長くなる。守から攻への切り替えがスムーズにいかず、相手に構えられて好機を逸する場面も散見。指揮官は「コントロールできなかった」と言ったが、パスがひっかかり、攻守が入れ替わってしまう場面も多かった。

 そんな状況が変わるのは3本目。前線に9年ぶりに甲府に帰ってきたハーフナー・マイクと金園英学を並べて「ツインタワー」が完成すると、攻撃が活性化した。藤枝の選手の足がやや止まったこともあるが、素走りを繰り返す金園によってスペースが生まれ始めると、2本目途中からCBに入った山本英臣の広角パスを右サイドで受けた太田修介が敵陣深くまで持ち込んでグラウンダーのクロス。ボックス内でハーフナー・マイクが合わせて2点目を記録した。

「最後にマイク、ゾノ(金園)が出て、1点とって追いついたというところはすごく評価できます。3本目の試合の前線の強力な2トップは、チャンスも作れていましたし、そこを活かせるように今後しっかりやっていきたい」

 ハイボールに強い2トップはしかし、マイクが足元の技術に優れ、金園は圧倒的な走力を誇る。相手に「空」を意識させながら、その実、「陸」から仕留めることもできるのがこの2トップの魅力だ。そしてその持ち味を生かす、山本と太田のお膳立ても見事だった。開幕戦後に指揮官が口にしていた「どうやって得点を取るか」という問いの一つの回答になるかもしれない。

切り替えは物足りなかった(伊藤監督)

 守備面は収穫よりも課題が目立った。1失点目はセットプレー。相手の右CKの場面で、ニアでフリックされて、昨季のJ3得点王・森島にフリーで決められた。最後は小柳が森島を離してしまったが、その前段から人を見張る・つかまえるのバランスが崩れていた。

「厳しく疲労感もたまる中でのゲームで、勝負を分ける要素」と指揮官もその重要性を認めるセットプレーは、早急に改善しなければならないが、集中力の維持と役割の整理をしっかりすることで、修正可能な案件とも言える。より問題だったのは、2失点目。

 相手がボールを下げてチーム全体が前傾姿勢を取った瞬間、プレッシャーを簡単に外されてボールをつながれ、後手を踏んだ。判断の遅れと動き出しの遅れが失点につながった。

「右サイドハーフ(松田力)がサポートに来れなかったときに、右サイドバック(小柳達司)のところで少し、(相手を)インサイドに入れさせてしまった。自分たちの戻りが遅れているときには、中を固めて外からというのを徹底しなければいけない。リキ(松田)が戻ってこれない状況で、タツ(小柳)とのところで中に行かせてしまった。それで2列目から走られたと思いますが、タツがしっかり外に追い出し、相手の攻撃をいち行程、遅らせることによってリキも戻ってこれるし、ボランチも戻ってこれる。そうすれば2列目にも対応できる」

 課題として浮かび上がったのは、ボールを失ったあとにファーストディフェンダーとなる選手の判断と動き。プレッシャーを外された後に後続の選手たちの判断と動き。指揮官は言う。

「きょうの目的として切り替えのところがあった。ボールを奪われた後、奪った瞬間については物足りない。再開に向けて攻から守、守から攻の切り替えは、オーガナイズを組むというのもそうですが、早さをもう少し出さないといけない」

 2失点目はボールを奪われた直後ではなかったものの、プレッシャーをかけにいって外されたあとの「切り替え」が遅れた。

 藤枝戦でいくつかの収穫を手にし、同時に課題を把握した指揮官は、これから1週間で、どこまでチームをブラッシュアップできるか。6月27日、4カ月遅れの今季のホーム初戦でもある再開初戦の相手は、開幕戦で群馬に3-0で快勝し、1試合の消化ながら首位に立つ新潟だ。

 仕切り直しの第一歩。最初が肝心なのは言わずもがな。J1昇格を目指す甲府が狙うのはもちろん、勝ち点3だ。