この連載では再開後のJリーグで注目すべきチームやポイントなど、見所を紹介していく。連載第1回はJ2の徳島ヴォルティスを取り上げる。彼らが新たに手にした、昨シーズンとは異なる魅力とはーー。

上写真=開幕戦でハットトリックを達成した西谷和希(写真◎J.LEAGUE)

文◎北條 聡 写真◎J.LEAGUE

渦の中心、動かないダブルピボット

 徳島ヴォルティスの進化が止まらない。

 その象徴が新型のWhirlpool――ワールプール(渦巻き)だ。何しろ、攻守の布陣も人とボールの動きも巻いてナンボ。その流れにまんまと呑み込まれた相手は渦の中に沈んでいく。

 今季のJ2開幕戦で完敗(0-3)を喫した東京ヴェルディがそうだ。
 
 渦の流れは攻めと守りで反転する。
 
 攻から守は左回り、守から攻は右回り。それに伴い、チームの布陣も変わっていく。守りの型は4-4-2、攻めの型は3-4-2-1。そのように人が動くわけだ。ただし、渦の中心は動かない。

 岩尾憲と梶川諒太のダブル・ピボットだ。

 バックスの手前に陣取る彼らを「旋回軸」にして攻守の両輪を回していく。これこそ就任4年目のリカルド・ロドリゲス監督が描いた設計図だ。カピタン(主将)こと岩尾は代えのきかない徳島の頭脳。その相棒として、新たに東京Vからプロ9年目の梶川を迎え入れた。

 J通算出場数が250試合を超える実力者だ。その経験値はやはり伊達ではない。開幕戦でも古巣を相手に老練な立ち回り。巧みな位置取りで次々とパスを呼び込み、攻めの基点となった。

 おかげで守備側は的を絞れず、百戦錬磨の岩尾がこれまで以上に冴える相乗効果。互いの距離感も絶妙だ。2人の絡んだパスワークから鮮やかにライン裏を突く場面もあった。人とボールの動きがまるで渦を巻くように――である。

 その流れをさらに加速させたのが新顔だらけのアタック陣だ。190センチに迫る長身の垣田裕暉(前ツエーゲン金沢)が最前線でターゲットになり、背後に据えられた西谷和希(前栃木SC)がその周囲を衛星のように動き回る。開幕戦で東京Vにトドメを刺す3点目はこの2人の合作だ。垣田の巧みなワンタッチパスからライン裏へ抜け出した西谷がクールに仕留めた。まさに互いの企図を瞬時に共有した以心伝心の産物である。

 この3点目を含め、徳島の全ゴールを叩き出した西谷は新天地の初陣でいきなりハットトリックの離れ業。その優れた決め手も魅力だが、個人で局面を打開する力、味方と密接に連係を図りながら敵の防衛線を突破する才覚も素晴らしい。