昨季はJ1で戦い、1年での復帰を目指す両チームだが、試合結果には大差がついた。柏は前半9分の古賀太陽の先制点を皮切りに、オルンガが2点を追加して前半のうちに3点をリードする。後半も攻め手をゆるめず、13本ものシュートを放った。4点目こそ奪えなかったが、柏が長崎に快勝し、勝ち点3を積み上げた。

危機察知能力を研ぎ澄まし、五輪代表へ名乗り

 古賀は柏アカデミーで育ち、2017年にトップチーム昇格。昨季の途中に福岡へ期限付き移籍し、プロになって初めて柏以外でのプレーを経験した。

「(福岡で成長したのは)守備のところ。昨年まで柏は、自分たちでボールを持ち続けるようなチームで、自分はずっとそこにいたということもあったので、相手にボールを持たれているときの対応は福岡でより学ぶことができたかなと思います。『こういうときには、ここが危ないんだ』という経験値は、実際に試合を積んでいかないと身につかないことだと思うので、ちょっとした異変や、危険な状況にも気付けるようになったかなと。細かいところですけれど、それは福岡に行って試合に出続けたことで、経験できたことかなと思います」

 右利きながら、左足も自在に操り、左右のサイドバックのほか、センターバックや中盤でもプレーができる守備のユーティリティープレーヤーでもある。元々ビルドアップ能力に優れるが、福岡で危機察知能力を研ぎ澄まし、一回り成長して今季柏に帰ってきた。右サイドバックを務める小池龍太とともに、両翼から供給される高精度のパスは、チームの大きな武器となっている。

「(パス出しは)リュウくん(小池)のストロングポイントということもありますけれど、今までは(攻撃が)右に偏りがちだったかなと。だから、左サイドの選手としてもっとやらなければいけない、チームのためにもっと左を活性化させなければいけないと思っています。今日は(左右で)良いバランスで攻撃できたと思っているし、相手の全体のバランスを崩すためにも、左右からうまくボールを(前線に)つけられました。この戦いを続けていければ」と、大きな手ごたえをつかんだ。

 年齢はまだ20歳。あらゆるポジションや戦術に順応する汎用性の高さを持つ稀有な才能であるだけに、今後の活躍次第では、来年に控えた東京五輪の代表メンバー(現U-22日本代表)に割って入る可能性も十分にあるだろう。

「(U-22日本代表メンバーは)最終ラインには本当に良い選手ばかりそろっているし、(メンバー争いは)熾烈ですよね。3バックの一枚をやれて、ウイングバックもこなせる選手では、湘南の杉岡(大暉)などがいますが、タイプ的には自分とそんなに似ていない。他にも同世代で同じタイプはいないかもしれないですね。簡単ではないでしょうが、(メンバー入りする)可能性はまだあると思っています。そのために、まずは試合に出ていないと(代表スタッフに)見てもらえないし、実際に呼ばれている選手はみんな試合に出ているので、それはマストとして、プラスアルファでチームの結果に自分がかかわっていけるようにならないといけません。目に見える結果というものが評価されやすいでしょうし、それは今まで以上にこだわってやっていきたい。ユーティリティー性やプレーの幅の広さは自分の強みだと思うので、それを出しつつ、(東京五輪まで)もうあまり時間がないので、危機感を持ってやっていきたいと思います」

 自国開催の五輪出場へ。日の丸戦士を目指す“太陽”が、J1復帰へまい進する柏を照らし続ける。

取材◎小林康幸