上写真=瀬古樹に迫る戸嶋祥郎(右)。慣れたボランチで中盤を仕切った(写真◎J.LEAGUE)
■2026年10月31日 J1第13節(観衆14,348人/@三協F柏)
柏 4-0 浦和
得点:(柏)小泉佳穂、弓場堅真、久保藤次郎、原田 亘
「逆に今日は助けられた」
その瞬間、戸嶋祥郎は一気に駆けた。
37分、中盤で浦和の瀬古樹のトラップがこぼれたのを見逃さなかった垣田裕暉が奪って素早く左の満田誠へ。さらに左に出た遠藤渓太へとつないだ。遠藤が中か外かとドリブルで突き破る先を選ぼうとした、そのときだった。
後ろから走り出した戸嶋が遠藤をさらに左外から猛然と駆けて追い抜いていった。これで浦和のDFダニーロ・ボザを釣ったことで、中央にズレを生んだ。見逃さなかった遠藤はカットインからシュート、ブロックされはしたものの右にこぼれて、詰めていた小泉佳穂が難なく右足でゴール右へとプッシュした。
戸嶋らしいダイナミックなスプリントが、先制ゴールに結びついた。
「チャンスと思えれば追い越していきたかったですし、1試合通して何回あるかどうかのシーンだったと思うので、そこは逃さずに、と。結果的には僕をおとりに使ってくれて得点につなげてくれましたけど、遠藤選手ならいいタイミングで自分に出してくれると信じて走りました。彼のチョイスが本当に良かったと思いますし、もし次のチャンスで自分に来たら自分で仕留められるようにしたいです」
この好プレーは、後半にもつながっていった。
「監督がハーフタイムに『追い越してくれてナイスプレーだった』って言ってくれたんです。それが自分としてはうれしかったし、より後半のエネルギーになったと思います」
リカルド・ロドリゲス監督の称賛が戸嶋をさらに走らせた。「80分で足がつってしまって迷惑をかけた」「中盤で引っ掛けられてばかり」「対面の瀬古選手に支配されてしまった」と反省の言葉も重ねたが、それでも、どこにボールがあっても顔を出してボールを受けてつなぎ、ビルドアップの中心になって浦和の圧力をかわし続けた。
そして、もう一つの重要な力の源は、赤のアームバンド。ゲームキャプテンとして戦った。
「キャプテンマークを巻くか巻かないかでプレー内容を変えたり、気持ちが変わったりすることはないほうがいいものの、それでもやっぱり何か思いが違うなと。自分がしっかりしなきゃと、そういう思いでできたので、逆に今日は助けられたと思っています」
その真面目な性格は知れ渡っているが、キャプテンマークがその真摯さをさらに後押ししてくれた。
今季はケガ人が相次ぐ事態になって、3バックの一角でプレーすることもあった。その柔軟性がチームを救っているが、この日は慣れたボランチではつらつと駆け回った。特にビルドアップのリズムを心地よく刻むワンタッチパスに冴えを見せた。
「誰がどこにいるかが時間が経つにつれて分かってきて、少し見えていなくても、そこにいてくれているなという感覚があって、トントントンと次につなげられています。そういった感覚はこのチームで長くやって出てきたもので、みんなのポジショニングの良さを信頼してプレーできているから。逆にもっともっと自分のところでなんとかできるようにしなきゃな、と」
この「つながる」という感覚は、先制ゴールを振り返る別の発言の中にも言葉として出てきた。
「自分が追い越して点につながったり、ボールを拾ったところからつながっていって、そこは自分の良さだと思うし、その回数を増やしたり、違うところで良さが出せるようにしたい。今日は本当に重要な一戦で、上位についていける勝ち点3だったと思います」
まさに戸嶋はそのユーティリティー性と仲間への信頼で「つながる」チームの要石だった。そして、優勝への希望をつなげていく存在になった。