上写真=54分、伊藤達哉が素早く右足でつついたボールがゴール左に飛び込んで逆転(写真◎J.LEAGUE)
■2026年9月19日 明治安田J1第8節(観衆22,734人@U等々力)
川崎F 3-3 鹿島
得点:(川)マルシーニョ、伊藤達哉、ペドロ・ホマーノ
(鹿)レオ・セアラ2、松村優太
「でもこの内容だったらやっぱり…」
「いや、なんかこれ、ダメだ」
伊藤達哉の脳内にひらめきが広がった。
54分、左から三浦颯太が送ってきたセンタリングが相手に当たり、マイナスにコースを変えて伊藤の目の前に流れてきた。左足でダイレクトで狙うにはちょうどいい場所。しかし、自分の瞬間的な感覚を信じた。
「こぼれてきたから最初は左足でワンタッチで打とうかなと思ったんです。でも、焦ってシュートを打つ感じになるというか、ああいうこぼれてきたボールを左足のワンタッチで決めるのはあまり得意じゃなくて。いままではゴール前ですぐに打っちゃっていたところがあるんです、点がほしいが故に。でもあのシーンは、最初は打とうと思ったんですけど、その瞬間にやっぱり、いや、なんかこれ、ダメだ、って思って、そのあとはうまくトラップして狙い通りになりました」
左足で止めてから、コンパクトな振りから右足のアウトサイドでつっつくようにしてゴール左へと送り込んだ。
これが2-1となる逆転ゴール。最終的には3-3までスコアは動いたから、「そのまま終わってくれたらよかったんだけど」と苦笑いになるのも致し方ない。
ただ、スコアはイーブンだが、内容で圧倒していたという感覚が、強く残っているという。
「内容はだいぶ圧倒していた実感があります。逆転されて、それでも最後は追いつけて、いままでだったら負けていたかもしれないけどそうではなかったのは良かった。でもこの内容だったらやっぱり勝ちたいのも正直なところ」
内容と結果を分解しながら振り返るのが許されるとするならば、自分たちがボールを手なづけて試合をコントロールする「主役」になっているのはいい兆しだ。
「守備がうまくいっているからか、ビルドアップもうまくいっているからか、たぶん両方だと思いますけど、シゲさん(長谷部茂利監督)のサッカーになって1年半、いろいろなものが積み上がっているからだと思っています」
その中で伊藤が自身に言い聞かせるのは「守備のところは意識しています」というベースの部分と、もう一つ。
「いまカウンターがチャンスになってますけど、自分が相手のサイドバックより前に行けたらもっとチャンスになる。長い距離にはなりますけど、スプリントを毎回かけていっています」
この日のカウンターの局面では、外からだけではなくて中にポジションを取ってボールを受けてから、そのまま中央を突き進むシーンも多かった。
「自分の中で幅が広がっていると思っています。その推進力のところは、今シーズン自分ですごく取り組んでるところなんです。フィジカルの状態がいいのか分からないですけど、とてもいい方に出ていると思っています。簡単ではないけれど、それをもう少しゴールとアシストにつなげられたら、さらに自分の武器が増えるなって」
狭いエリアでも細かいタッチで相手を翻弄してゴールを奪う強みは何度も証明済み。今度は、最初の一歩で相手の前に出て、二歩目から一気に相手を置き去りにしていくその推進力が、このアタッカーの次なるブースターである。