上写真=ケガの状態が心配されたが、復帰を果たし、好パフォーマンスを見せている酒井高徳(写真◎J.LEAGUE)
やらなければ、やれなくなる
8月15日のJ1リーグ第2節・FC東京戦で相手選手と接触し肋骨を痛めて以降、離脱していたヴィッセル神戸のDF酒井高徳が同29日の第4節・セレッソ大阪戦で戦列に戻ってきた。
負傷した際の状況からして、離脱が長引くことを覚悟したファン・サポーターも多かったはずだが、わずか2週間で戦列に戻り、相変わらずの鉄人ぶりを披露。スコアレスで迎えた66分には、左コーナーキックの流れから豪快なボレーシュートで相手DFのファウルを誘ってPKに繋げるなど、勝負強さを示し、チームの勝利に貢献した。
ヴィッセルとしては主力選手にケガ人が相次いだこともあって大幅にメンバーを入れ替えて臨んだ一戦だったが「正直、僕自身はすでに負けが許されない状況だと感じています。上位チームに離されないためにも何がなんでも勝点3を取って、追随しなければいけないと思っていました」と酒井。周囲の不安を、自らのパフォーマンスで払拭してみせた。
セレッソ戦後、この日がJ1デビュー戦だった川端彪英は、日頃からたくさんのアドバイスを受けているという酒井が同じピッチにいる心強さについて「実家に帰って、お母さんがいるくらいの安心感」と表現した。おそらくそれは他の選手も同じだろう。戦況に応じてチームや個々の選手に必要なアドバイスを行い、変化を求めながらピッチのコンダクターとしてチームを操縦する姿は今やヴィッセルの日常だ。
もちろん、彼自身も勝利への執着は強い。
「Jリーグや天皇杯でのタイトルなど自分たちが成し遂げてきた結果からも神戸は常にタイトルが近いチームだと感じなきゃいけない。内容が悪い、ケガ人が多いことを理由に負けていいチームではもうないと自覚しなければいけない。
正直、今シーズンはここまでいい流れではなかったですが、よくない内容の試合でも修正して勝つということを繰り返しながら『気づいたらずっと勝っていた、負けていなかった』というのがこれまで築き上げてきた神戸の強さ。今日の試合がそれを継続していく第一歩になればいいなと思っています」
言葉に帯びる『熱』を、プレーでもしっかり表現できる選手だ。今年で35歳と、いよいよ30代も後半に差し掛かったが、体も頭もフレッシュな状態を保ち続けている。その理由を尋ねると「俺、フレッシュなのかな?」と笑い、言葉を続けた。
「常に自分を厳しく追い込んでいるのは事実だと思います。自分を美化するわけではないですが、この年齢になると追い込めば追い込むほど動けるようになるし、やらなければやらないほど、やれなくなるから。それもあって、基本的には常に『やる』『追い込む』というのが僕のスタンス。そういう意味では、フレッシュさを失わないために追い込むという逆行したことをやっている気もします(笑)」
チーム内のベテラン選手とも、そうした考えを確認し合うことも多いそうだ。
「神戸のベテラン選手とも『年齢が上がるほど、やらなくなると落ちていく一方だから、とにかく、どんどん、どんどんやり続けるしかないよな』という話はよくします。だから、年齢が上がるほど、ハードな練習に向き合う時間を増やさなければいけないよね、と。ただ、そのためには常に自分を戦える状態にしておかなくちゃいけないので。当たり前のことですが、常日頃から運動、睡眠、休養の3つのリズムと質をどれだけ高く保てるかを意識しながら、常に自分をリフレッシュして次に向かうという毎日を繰り返しています。その方法はたくさんありすぎるのでここでは割愛しますが(笑)、その3つは常に大事に考えて生活しています」
日々、真摯に取り組んでいるからこそ「今の30代の選手は、自分たちが若い頃に見ていたJリーグのベテランと呼ばれる選手以上のパフォーマンスを出せている」とも胸を張る。事実、時代の移り変わりともに、サッカーのトレンドも変わり、インテンシティや走力が求められる中でも、Jリーグで活躍する30代選手は、総じて元気だ。常にファイティングポーズをとるだけではなく、その先に明確な『結果』を描いているからだろう。
「ベテランと呼ばれる域に入ってきた30代の選手が経験と技術をしっかりとパフォーマンスで表現しているのは、Jリーグにとってすごくいいことだと感じています。実際、神戸でも世界、海外を経験してきたベテランが多い中で、その経験値をしっかりとチームに落とし込んでくれている。ただ、誤解を恐れずにいうならば、僕たち30代の選手は、後輩たちに教えるため、Jリーグに還元するためにサッカーをしているわけではなく、チームの勝利に貢献するために戦っているので。僕らの姿を見て若い選手が何かを感じ取ってくれるのはいいことですけど、それも、僕たちが常にパフォーマンスを高いレベルで維持し続けていることが大前提というか。その結果として、Jリーグやチームのレベルアップや、価値を高めることに繋がっていくというのが理想だし、僕も常々そう思ってプレーしています」