上写真=2ゴールで勝利に貢献したチャヴリッチとチームをけん引し続けた鈴木優磨(写真◎Getty Images)
■2026年8月7日 J1開幕戦(観衆63,960人/@MUFG)
横浜FM 3−4 鹿島
得点:(横)三井寺眞、谷村海那2
(鹿)レオ・セアラ2、チャヴリッチ2
最多の6万3960人が開幕ゲームに来場
先発起用に応えて先制ゴールを決めた横浜FMの三井寺(右/写真◎Getty Images)
秋春制となり、新たなスタートを切ったJリーグは、その開幕戦として8月7日の金曜日に2試合を行った。東京・国立競技場では横浜Fマリノスと鹿島アントラーズが対戦、ともに1993年のJリーグ誕生から2部に落ちたことがない二つだけのクラブであり、優勝回数も1位と2位。スタンドには最多入場者を更新する6万3960人の観客が詰めかけた。そして試合も、その記念すべき対戦、状況に相応しく白熱の攻防となった。
前半の主役はこの春、中学校を卒業したばかりの横浜FMの三井寺眞。驚きのスタメン起用に応え、開始7分に先制ゴールを決めた。右サイドを破った近藤友喜の折り返しに勘良く走り込んで相手DFと競りながらも押し込んだ。直後に1点を返されるのだが、18分には後方からのロングボールを左サイドに開いて落下点に入ると、右足ヒールで浮かせて百戦錬磨のDF植田直通をかわし、落ち着いてキープして天野純へ渡して、谷村海那のゴールにつなげた。
さらに後半に入っても堂々たるプレーを見せ、58分には左サイドの混戦からボールを奪うと相手DFに囲まれながら巧みなタイミングとコースのパスを天野に通す。ワンタッチで中へ返したボールをまたしても谷村が決め、ここでもゴールの起点となった。ボールコントロール、鋭いドリブルも見事だが、16歳とは思えない落ち着きと物おじしない積極性が将来性を感じさせた。
3―1のリードで、このまま横浜Mが勝利を掴んでいれば、ヒーローとして各メディアのトップニュースになっただろうが、残念ながらそうはならなかった(それでもかなり取り上げられるだろうが)。
スティーブ・コリカ監督も「デビュー戦でゴール、2点に絡んで素晴らしいパフォーマンスだった。以前から言っていたように年齢は関係ない」と賛辞を贈ったが「負傷で交代したのは残念だった」と話したように、さすがに大舞台での全力ブレーと緊張で61分には足をつって無念の交代となった。
ここから主役の座は鹿島に移っていく。残り30分とアディショナルタイムで3ゴールを奪い、逆転勝利をつかんだのだ。
光ったのは的確かつ大胆な選手交代見せた鬼木達監督の采配だ。ハーフタイムに、高校3年生の18歳で、やはり開幕戦で初スタメンを飾った吉田湊海に代えて松村優太を投入。この時点ではまだ1点差であり「やや気負いが見られた」(鬼木監督)と吉田を下げ、突破力のある松村を入れるのは常道だが、2点差にされると、67分に柴崎岳と林晴己を投入。ボランチとサイドMFを入れ替えて攻撃を活性化して1点差とし、85分には両サイドバックの広瀬陸斗と小川諒也に代えてFWのチャヴリッチと徳田誉を送り込んだ。松村と林を両サイドに置いて前線には鈴木優磨、レオ・セアラ、徳田、チャヴリッチとストライカーを並べて2―4―4とも言える布陣で総攻撃を仕掛けた。
結果的にこれが功を奏して4―3の逆転劇につなげた。鬼木監督は「もう攻撃的な選手を入れるしかなかった」と語ったが、攻撃に振り切った交代策で流れを完全に掌握した。
交代してピッチに入った選手たちは皆、積極的なプレーで勝利に貢献したのだが、その中で他とは違うまさに「いぶし銀」の輝きを見せたのが柴崎だった。押せ押せの勢いで、ゴールに迫り続けた中で、アディショナルタイムも予定の11分も大きく過ぎた時間に、CKから相手のクリアを右サイドで拾うと、誰もがクロスを放り込むだろうと思った瞬間に柔らかいボールをペナルティエリア右の空いたスペースに送り込んだ。これに反応したチャヴリッチがフリーで走り込み、GKの股を抜くシュートを決めて逆転に成功した。あれだけハイテンションの中で、的確な判断を下して絶妙なバスを出せるのは、柴崎だからこそだ。
16歳が躍動して60分を盛り上げた試合は、34歳の冷静さで決した。新たなシーズンを彩る見応え十分な試合だった。
取材◎国吉好弘
マテウス・ブエノに代わって67分から登場し、決勝点をアシストした柴崎岳(写真◎Getty Images)