上写真=8月1日のドルトムント戦で45分プレーしたFC東京のバングーナガンデ佳史扶(写真◎Getty Images)
しっかりやっていれば見てくれる
本人も少なからぬ手応えがあったのだろう。試合後、ミックスゾーンで取材に応じるバングーナガンデ佳史扶には時折、笑顔も見られた。開幕1週間前に国立競技場で開催されたドルトムントとのプレシーズンマッチ。後半開始から橋本健人に代わって出番を得ると、左サイドバックとしてチームの攻撃を活性化した。
目を見張ったのは、クロスの球種とポジショニングである。状況に合わせて蹴り方を変え、ストレートのボールをゴール前に送ったかと思えば、相手の守備が整うよりも早くカーブをかけたボールを味方に届けた。
「ケガからの復帰を目指すリハビリ期間の中で、自分の体と向き合って、色々な蹴り方についてトレーナーやコーチと話しながら工夫してきました。負担がかからない蹴り方について自分でも考え、何通りも練習してきた。ようやく新しい蹴り方が体に染みついてきた感覚はあります」
代表初キャップを刻んだ2023年3月のコロンビア戦で右膝の膝蓋骨骨挫傷を負い、戦列を離れたのを皮切りに、骨挫傷や左大腿直筋肉離れなど、度重なるケガで離脱を繰り返してきた。
「2年前にちょっと大きなケガをして1年間離脱したんですけど、全く同じところのケガを、ここ2年繰り返してしまった。自分の中でもうこれを最後にしたいと思います。キャンプも最初からは合流できなかったんですけど、早い段階で合流できて、開幕直前の今日の試合(ドルトムント戦)もちゃんと45分出られたのは大きな収穫です。まずはJリーグの開幕を目標にリハビリを進めてきました。もちろんスタメンで出たい気持ちもありますけど、焦らずに、まずは繰り返さないのが一番の課題。チームの戦力になれるようにやっていきたい」
前半、FC東京の攻めは滞りがちだった。しかし、左サイドハーフの位置に入った俵積田晃太とともにピッチに漂う淀みを払拭し、流れを生んだのが佳史扶だった。とりわけ自軍のセンターバックからビルドアップする際、自らがパスの受け手となるだけではなく、状況に応じてポジションを取って内と外にパスコースを作り出すプレーが効いていた。
この夏に行われたワールドカップも、復活を期す彼に前向きな刺激を与えていた。
「(北中米W杯を見て)やっぱり一度一緒にプレーしたメンバーにあの舞台でやっているのを見ると、今までの自分が観ていたワールドカップとは違う感覚がありました。初めての感覚というか。でも、それを思っても今はどうにもできないし、自分でコントロールできるところではないと思っています。まずはしっかり自分が復帰すること。ここで結果を残せば、また(代表に)戻れるという自信はあるので。今は目の前の試合に集中して、その積み重ねが次のワールドカップに繋がると思っています。もちろん出たい気持ちはありますけど、一日一日、焦らずにサッカーの楽しさを噛みしめながらやっていきます」
来年3月、A代表は森保一監督から大岩剛監督に引き継がれる。パリ五輪を目指す世代別代表でともに戦った指揮官だ。
「よく知っている監督なので、しっかり結果を出していれば見てくれると思います。でも、まずは自分がチームで結果を出すことが最優先。その先に縁があれば、また代表を目指したい」
世界の舞台で躍動する仲間の姿を見て、悔しさを感じないわけがない。FC東京で過ごす日々の先に大いなる道が続いていると信じて、佳史扶は開幕から勝利のためにピッチに立つーー。
取材◎佐藤景