上写真=本間至恩はさっそく周囲から「いいキャラ」の声も。「まだ出せていないけど、まあそれがオレなんで」と笑う(写真◎サッカーマガジン)
フィットするのに時間は必要ない
セレッソ大阪でプレーしていた本間至恩がやって来ると聞いて、FC東京のファン・サポーターは真っ先にあのゴールを思い浮かべたのではないか。
およそ1カ月前の6月6日、C大阪と戦ったJ1百年構想リーグプレーオフ3-4位決定戦第2戦で、開始わずか10分にたたき込まれた先制ゴールのことである。決めたのは本間。あまりにもきれいに崩された痛恨の失点だが、裏を返せばこれは、FC東京が望んでいたものを示す象徴的なシーンとも言えた。
「ウイングの選手をどう補強していくか。我々のスタイルだと前線の選手はスペシャリストも大事ですけれど、マルチな部分も必要になってくる」
J1百年構想リーグで20試合すべてに出場していた遠藤渓太が柏レイソルに移って、FC東京は左の翼を必要としていた。俵積田晃太のほかにここでプレーできる選手として、松橋力蔵監督がクラブと話をして白羽の矢を立てたのが、本間だった。
求めていたのは、「スペシャル」と「マルチ」の資質を兼備するアタッカー。松橋監督は説明する。
「本間はスペシャリストに近いと思いますが、インサイドワークもしっかりできる。そこは我々の考えと一致している部分ですし、彼自身もやはりそういう考えを持っているので、フィットする時間が必要というと、そんなことはまったくないと思っています」
本間の代名詞は、踊るようなステップのドリブルだ。細かい足の運びと、抜け出す最初の一歩のスピードの組み合わせが絶妙。アルビレックス新潟時代にそのキレのある突破力で名を馳せたあと、ベルギーのクラブ・ブルージュに渡り、日本に戻ってきて浦和レッズ、セレッソ大阪とプレーする場所を変える中で苦しんだ時期も長かったが、一貫してその武器は変わっていない。
ドリブルこそが本間の「スペシャル」ならば、「マルチ」な資質を示すのが周囲とのコンビネーションプレーだ。本間はむしろ、その点を強調する。
「足元だけで受けていたらつぶされる。裏を取ったり周りと連係しながらプレーしないと、1対1の勝負だけだとどうしても相手に読まれたら難しくなる」
新潟時代は左サイドバックの堀米悠斗(現・北海道コンサドーレ札幌)と組んで、変幻自在にサイドを切り裂いた。C大阪では例えば、冒頭に挙げたプレーオフのゴールが成功事例だ。
畠中槙之輔の縦パスから香川真司、櫻川ソロモンといずれもワンタッチで素早くつなぎ、柴山昌也へ。この間に本間が左からゴールに向かって裏のスペースへ潜り込むと、柴山のパスをワンタッチでゴール右に流し込んだ。連係の最後に風のように現れて、鮮やかなコンビネーションを完結させた。
「新潟でやっていたプレーは、中に入っていってターンして、と、好きなように動いていい感じでした。東京のサッカーも新潟の方に近いと思っていて、それでも裏が空いているならそこを狙うという感じだと思います。そこは自分のやってきた経験をうまく落とし込めれば」
あのゴールのようなコンビネーションを、FC東京で何度でも再現する意気込みだ。