上写真=リカルド・ロドリゲス監督が先頭に立ってサポーターを鼓舞する。柏が苦しんでいる(写真◎J.LEAGUE)
■2026年3月7日 J1百年構想リーグ第5節(観衆:14,646人@フクアリ)
千葉 2-1 柏
得点:(千)津久井匠海、石川大地
(柏)久保藤次郎
「相手の矢印を折れてはいない」
1勝4敗。柏レイソルがなかなか勝てない。
前半からジェフユナイテッド千葉を面白いように振り回して圧倒しながら、ゴールは88分まで待たなければならなかった。
2点のビハインドを取り返そうと仕掛けた猛攻に次ぐ猛攻。ゴール左ポスト近くで瀬川祐輔が粘って後ろに戻し、細谷真大がシュート、DFにブロックされたが、久保藤次郎がこぼれ球を押し込んだ。
久保はこれを狙っていた。
「こぼれ球、めちゃめちゃ狙ってるんで。あそこに入っていくのは常に意識していますし、真大があそこでシュートまでいくのは信頼してるので、入っていくだけですね。いつかこぼれてくるだろうと思っていて、こぼれてきてくれたのでよかったなと」
自身の今季初ゴールが生まれても、あと1点が届かなかった。地元のライバルに今季初の、そしてJ1で17年ぶりの勝利を献上することになった。
昨季は首位と勝ち点差わずか1の2位にまで登りつめたチームが、今季は勝てない。EASTの10チーム中、9位。
この日、唯一のゴールを決めた久保の言葉が印象的だった。不振が続くチームの「いま」を主観と俯瞰の両方から語った一連の説明が、なるほどと思わせる説得力を持っていた。
「前半を0-0で折り返すことができて、なんて言うか、上出来だなという感覚があったんです」
圧倒的に攻めながらの0-0は不本意ではないか、と思ってしまったが、「相手を疲弊させて、後半に勢いに乗ろうという感じだったから、0-0でオッケーだった」からだという。ところが……。
「でも去年と違うのは、相手があまり疲れている印象がないということ。だから、今日の前半は『ただの0-0』だった」
逆に後半に2点を失い、逆襲も1点止まりで虚しく逃げ切られる、という展開。
ゴールの奪い合いで敗れた川崎フロンターレ戦、先制しながら逆に後半にひっくり返された東京ヴェルディ戦、チャンスに決めきれなかった鹿島アントラーズ戦と、負けの中身はもちろん異なる。ただ、昨年の柏なら、ボールを目まぐるしく動かして、振り回すだけ振り回して相手を走らせ、足の動きを鈍らせてから後半に勝負を決めてきた。実際に、昨年は全60ゴールのうち、後半に決めたのが58.3%にあたる35もあった。
それができなくなった理由を、久保が端的に言葉にする。
「やっぱり、相手の矢印を折れてはいないですよね」
相手が奪いにきたその逆を突いてボールを動かせば、技術面だけではなく精神面でもダメージを加えることができるという。
「相手にスイッチが入った瞬間であれば、矢印を折ることでメンタルが折れて走れなくなることは本当にある。いまはあまり矢印を折ることができていなくて、相手のプレッシャーをそのまま食らって、相手に自信をつけさせてしまって走られてしまう。そういう連鎖があると思うので、それが原因ですね」
リカルド・ロドリゲス監督は記者会見で「チャンスもたくさん作っている。間違っていない。このスタイルを続けていく」と強調する。ならば、そのスタイルを高めるような何かをピッチの上で加える、あるいは変化を与えていくことも求められる。
久保はそのことについてしばらく考えて、「いまの時点で出る一番簡単な答えは」と前置きしてから、アイディアを明かした。
「やっぱり個ではがせれば一番簡単かなと。誰かが一人はがせればマークがずれる。それがあれば、今度はチームの連係につながっていくんです。
個ではがせば、相手は次にやらせたくないと考えてそちらに重心が向く。例えば僕が縦に出ていけばそちらを切ってくる。そうしたら(内側にいる小泉)佳穂を使ったりという連係が生まれてくる。
そして、コンビネーションがうまくいけば個が生きることにもなるし、常にその相関関係にあると思います」
連係ばかりでは閉塞する。個だけでは対応される。どちらかだけに針が振れることは本意ではない。
「いいのか悪いのか分からないですけど、自信はあるんです。自分たちのサッカーもある。だから、まだまだ自分たちを信じています。でもそれって、一歩間違えれば過信だし、安心だし、去年と戦ってる相手は違うし、選手も違う。
だからこれからは、自分たちの中の駆け引きが必要で、自信を失ってはダメだし、でも自信はあっても過信や慢心とは違う。そこをもう少し見つめ直したい」
リカルド・ロドリゲス監督は「2年目の難しさは感じない」と断言するから、いわゆる「2年目のジンクス」とは異なるのだろう。それでも、久保が感じる個と組織の両輪をバランスよく回すことが、解決への大きなヒントになるのかもしれない。