上写真=長倉幹樹がゴールに迫る。「3点目」を奪うのが次の課題(写真◎J.LEAGUE)
■2026年2月21日 J1百年構想リーグ第3節(観衆:22,672人@U等々力)
川崎F 1-2 FC東京
得点:(川)山原怜音
(F)マルセロ・ヒアン、室屋 成
「少しずつ生まれ始めている」
1-1(PK5-4)鹿島アントラーズ。1-1(PK5-3)浦和レッズ。そして、2-1川崎フロンターレ。
FC東京が「3連勝」だ。
といっても、特別ルールによって最初の2試合はPK勝ちで、あくまで90分では「引き分け」なので、3節にしてようやく「初勝利」ということになる。
それでも、負けなしで終えた3試合を内容から注視すると、FC東京の進化の跡が浮かび上がってくる。
球際の強さや献身的な連動プレスという基本中の基本が徹底されているのはもちろんだとして、昨年のようにボールや人がむやみに行ったり来たりするようなノイズは減って、慌ただしくなく、落ち着いて、しっとりとボールを運んでいく滑らかさが見て取れる。
「(向上の度合いを)数字で表すことは難しいですが、今年は準備期間が非常に短かったこともあって、スタートから戦術的なことを常に突き詰めていきながら、コンディションをどう整えていくかでやっていきました」
2年目の指揮を執る松橋力蔵監督はまず、チームビルディングの順番をそう明かす。フィジカルを一定まで高めるステップを経てから戦術的な落とし込みに移行する、という従来の組み立て方ではなく、いわば「戦術優先」で取り組むことによって、あとからフィジカルを戦術に追いつかせる手法を採ったというのだ。結果的に、それが功を奏している。
「そうやってやってきた中での表現は、現時点では非常に素晴らしいものを発揮してくれていると思います。その中から自分たちの中で起きる化学反応も徐々に起きつつあって、非常に素晴らしいパフォーマンスをしてくれています」
化学反応とはつまり、こういうことなのだという。
「ディフェンスラインでの左右のサイドバックの立ち位置、センターバックとのつながり、そこからボランチ、トップ、シャドーの選手が全体で一つになって動くことによって、1つ先、2つ先ぐらいまでのバランスのいいタイミング、動きがすごく多かったと思っています。特にそういうことが色濃く出ているのは、左サイドではあるなと思っています」
そのベースは、丁寧なビルドアップにある、とも。
「距離感というところは、相手の立ち位置によってなので、そんなに大きく深くというわけではありません。ただ、自分たちがボールを動かしていく上で、プラス1をどう作っていくかというポイントがあり、そのスタートがゴールキーパーであるということ。それから、そのスタートからいかに前進して、相手の敵陣に近いところで作っていくか。そこはトレーニングでも共有しながらやっています」
一方で、距離感が整った(ように見える)状態が正解のすべてかというと、そうではない、というのが、松橋監督が狙うレベルだ。
「ある立ち位置を取ったときに、誰がそのスペースを埋めるのか、相手の誰が出てくるからうちの誰がそこに入るのか、というところは、非常にベーシックな感じの説明というか、一般的な解というか、そこはすごくきれいに見えるのかもしれません。でも、行く先はそこではなくて、自分たち固有のところに持っていければいい。バランスがすべて整っていることももちろんいいけれど、もう1つ、相手が対応できないような形が少しずつ生まれ始めているので、そういうところを選手がしっかりと理解をして整えてくれていると思っています」
「守・破・離」(基本から応用、そして創造へ、という武道などの理念)で言えば、昨年が「守」で、いまが「破」、さらには「離」の段階に向かっているところと言えるだろうか。
ベーシックな立ち位置・距離感で整えたあとは、それを独自の形に進化させることが松橋監督の目的。スムーズさばかりが優先されると、相手に対応されやすくなるデメリットも生まれてくるのはフットボールの歴史が示している。ノイズを消したあとに、またあえて別の種類の「機能的ノイズ」を混ぜることでオリジナリティーを作り上げる、というイメージだろうか。
川崎フロンターレ戦は2-1というスコア以上の完勝にも見えたが、室屋成も長友佑都も稲村隼翔も「3点目を取らなければいけなかった」と口を揃えた。松橋監督とFC東京が目指すところに足りないものがこの試合において具体化されたとすれば、「3点目を取れなかった」ことにある。
もちろん、道は半ばである。手応えのある「初勝利」の次に何を見せるかで、進むことのできる道は変わっていくだろう。