上写真=左利きの特性を生かして右から切り込む紺野和也。攻撃力アップを担う(写真◎J.LEAGUE)
■2026年2月8日 J1百年構想リーグ第1節(観衆:22,226人@U等々力)
川崎F 5-3 柏
得点:(川)エリソン3、松長根悠仁、脇坂泰斗
(柏)細谷真大、瀬川祐輔、山内日向汰
家長昭博、伊藤達哉…
近年の川崎フロンターレでは「右サイド」がとても興味深い。
まずは家長昭博。主に4-1-2-3システムの右ウイングに入りながら神出鬼没な動きと圧倒的なテクニックを見せつけて、2017年、18年、20年、21年に優勝した黄金期でメーンキャストを務めた。
昨季は伊藤達哉だ。ドイツから戻って1年目、Jリーグは初めての挑戦ながら、4-2-3-1システムの右サイドハーフとして定着すると、のびのびと楽しそうなドリブルで相手を振り回して、ゴールもチームトップの13をマークした。
家長は18年、20年、21年、22年にJリーグベストイレブンに選ばれ、18年はMVPにも輝いた。伊藤も昨季のベストイレブンだ。
そして、2026年。2月8日の明治安田J1百年構想リーグ第1節、柏レイソル戦ではその伊藤は左MFでプレーし、PK奪取、アシスト、崩しのパスで3ゴールに絡んだ。家長もベンチに控えていた。
家長は左利きで、伊藤は右利きだが左足の技術も高い。そんな「左足でボールを操る右サイドのアタッカー」という系譜を継ぐべく、右サイドハーフで先発したのが、左利きの紺野和也である。
2点目につながるパスの意味
細かいステップと一瞬のスピードで相手を振り切るドリブラー。所属するチームごとに「◯◯のメッシ」の異名を授かってきた。FC東京から移籍したアビスパ福岡で当時の長谷部茂利監督に重用され、先に川崎Fに移った監督を追うようにして今季加わった。
その初戦、紺野はまずは5-3で振り切った勝利を喜んだ。
「開幕戦で勝てたのは本当に大きいと思います。自分自身も課題も多くありますし、コンディションもまだまだ上げられると思う」
左利きを生かして右サイドからカットインしても、そのまま縦に抜け出しても何かを起こすことができる。ボールをずらすスピードで相手の逆を取り、小柄だからこそ相手の懐に自分の体をねじ込んでいって、狭いエリアも苦にしない。相手にとってはやっかいだ。
チームが新しくなってもその特性を思う存分、発揮した。そこに、もう一つのエッセンスを加えようとしている。パスだ。
「そこは自分の質次第だと思うので、しっかり通していければいい。これから合ってくると思うので」
74分に大関友翔に代わるまで、ドリブルと見せかけて右サイドバックの山原怜音を走らせたり、ニアゾーンに入るエリソンや脇坂泰斗へのパスを狙った。
11分の2点目もパスで貢献した。伊藤が左で受けてゴールへ突進し、切り返したところをエリソンが蹴り込んだものだが、GKスベンド・ブローダーセンからのロングキックをエリソンが落としたボールを中盤で受けて、左の伊藤に素早く展開したのが紺野だった。
これから合ってくる、という「予言」は確かな実感の裏返し。ドリブルにパスを織り交ぜた「紺野進化形」が早々に見られるかもしれない。
「特殊な感じにはなっちゃうので」
ただ、柏戦でのプレーが今季の川崎Fの「基本形」かというと、そうとも言えないかもしれない。紺野はこんなふうに話している。
「レイソルさんはボール回しがうまいので、だんだんと(守備陣形の)間が空いてきちゃったりする。対レイソルさんだとちょっと特殊な感じにはなっちゃうので、今日は割り切ってしっかり守備からいいカウンターができて良かったんじゃないかなと」
5点目を決めた脇坂泰斗も「少しゲームが落ち着いたところでショートカウンターのほうが効率がいいという選択をしました」と明かしている。新チームのスタートとなる開幕戦は緊張感も伴うし、独特なスタイルの柏にあえて合わせるような戦略で臨んでいたわけで、長谷部監督体制2年目の川崎Fが目指す本当の姿は、まだヴェールを脱いでいないのかもしれない。
というわけで、川崎Fの新しい右サイドが個の力でも連係面でも、ここからどんな面白さを披露するのか、楽しみになってくる。