クラブ創設35周年を迎えるガンバ大阪のキーマンたちを取り上げる『集中連載』。開幕を目前に控えた最終回は、チームの大黒柱・宇佐美貴史だ。今シーズンより中谷進之介にキャプテンを託すこととなるが、変わらず責任を背負い、ピッチに立つことを誓う。

キャプテン交代も「やるべきことは変わらない」

キャプテンに就任して3シーズン目だった2025年シーズンはJ1で29試合に出場して8得点を挙げた(写真◎J.LEAGUE)

 狙いを持ってチームづくりが進む中で、1月28日には今シーズンのキャプテンおよびリーダーシップグループが発表され、宇佐美は過去3シーズンにわたって預かってきた『キャプテン』を中谷進之介に受け継ぐことになった。彼の中ではシーズンが始まった直後から「今年はキャプテンはしない」と決めていたようだ。その理由もまた、前向きな考えがあってのこと。だからスッキリとした気持ちでサッカーに向き合えているという。

「23年からの3年間、キャプテンを預かってきて、この先のガンバの未来とか、チームにとって何がベストかを考えたときに、僕より下の世代がキャプテンをしてチームに新しい風を吹かせるべきだと思ったというか。そういう新陳代謝はチームが成長していく上で絶対に必要やな、と。ガンバに限らず、どのクラブにも言えることですけど、世代交代が遅れれば遅れるほど回収に時間がかかりますしね。もちろん、サッカーは年齢でやるものではないし、それはガンバでも(倉田)秋くんやヒガシくん(東口順昭)が示してくれているとおりやと思います。でも、ガンバの未来を考えると、今年で34歳になる僕がキャプテンであり続けるより、下の世代というか、若い世代がフレッシュな風を吹かせるほうが絶対にいい。だから今年は最初からキャプテンはしないと自分の中では決めていました。

 と言っても、何も決まっていない状況で自分からそれを宣言するのも変なので(笑)。イェンスにはそれとなくは僕の考えも伝えていた中で最終的にはキャプテン発表の少し前にイェンスとも言葉を交わし、シン(中谷)をキャプテンに、という意向を聞いて、いいと思います、と返したって感じです。まぁ、キャプテンであろうとなかろうと、自分のプレーや責任が変わるわけではないし自分自身は大して何も変わらん気もするけど、チームにはそれによって生まれる変化が絶対にあると思うから。それはガンバの未来にも絶対に不可欠やと思うし、ここ2年はその変化をいい方向に促せる選手も増えてきたからこそ、いいタイミングなんじゃないかと思っています」

 むしろ、彼自身はキャプテンを外れたことで自分にどんな変化があるのかを楽しみにしているそうだ。

「ガンバのユニフォームを纏う責任に変わりはないし、自分がやるべきことも変わらんから。特に気持ちが軽くなったとか、あからさまに何かが変わったみたいな感覚は、今のところは特にないです。ただ、公式戦が始まってから感じることは出てくるかも。この3年とは違った、少し俯瞰したような目でチームやサッカーを見られるようになるかも知らんし、これまでとは違う立場でキャプテンや若い選手をサポートしようとする自分がいるかもしれない。それによって自分が感じることも変わってくる可能性もありますしね。

 自分自身にフレッシュな風を吹かせるためにも、そうなればいいなとは思っています。ただ、基本的にシンには、僕のサポートは必要ないと思っています。シンの思うやり方で先頭に立つことがガンバにいい新陳代謝を起こすことにもなるはずやし、シンはそれができる選手やと思うから。なので、僕もそこにしっかり足並みを揃えつつ、監督には『貴史には責任感から少し解放されて、プレーすることを楽しんでほしい』という声も掛けてもらっているので、サッカーを楽しませていただこうと思います」

開幕戦の大阪ダービーは「勝つのみ」

 余談だが、このオフシーズン、宇佐美は初めてJFA公認Cライセンスコーチ養成講習会に参加した。指導者目線でサッカーに触れたことは、現役選手である自身にとって刺激になったのだろうか。

「選手と指導者は全く別物やなって思いました。自分で練習を組んで指導実践みたいなこともしたけど、プレーの見え方も変わるし、何より選手側のトレーニングに対する姿勢や機微みたいなものが、指導者にはこんなにも分かりやすく伝わっているんやなと驚きました。なんていうか、つまらんそうな顔をしているなとか、前のめりではやってないな、とか(笑)。『指導者にしてみたら、いい姿勢で取り組んでいる選手のほうが好ましいよな』とか。それを知って若い頃の自分は決して模範的な姿勢で練習に取り組んでいた選手じゃなかったと思い、『よくぞ、あんな自分に付き合ってくれたな』と過去、お世話になった監督の皆さんに感謝いたしました(笑)。

 その一方で、指導者としての学びが選手に活かされるのかと言えば、それはまた違う気もするというか。講習会でも学んだような話をイェンスから聞くこともあって、それを受け取る側としては、こういう見せ方をしたほうがいいな、みたいに思うときもあるけど、選手である以上はやっぱりあれこれ考え過ぎず、全力でサッカーをするのが一番やと思うので。そこはこれまでと変わらずにやり続けるだけだと思っています」

 今シーズンの目標について尋ねると「いつもどおり」と、具体的な中身は明言しなかった。宇佐美にとって、タイトルを目指すことや毎年のように掲げてきた『2ケタゴール』は当たり前過ぎる目標で、敢えて口にするまでもないからだろう。目前に迫ったJ1百年構想リーグ開幕戦の『大阪ダービー』についても、一言に全ての想いを込めた。

「勝つのみ」

 その結果こそが、本当の意味でチームを「前へ」進めていく力になると知っているから、2月7日、宇佐美は開幕勝利だけを目指してヤンマースタジアム長居に立つ。

取材・構成◎高村美砂[フリーランスライター]

PROFILE◎うさみ・たかし/1992年5月6日生まれ、京都府出身。178cm69kg。G大阪ジュニアユース-G大阪ユース-G大阪09-バイエルン(ドイツ)11-ホッフェンハイム(ドイツ)12-G大阪13途-アウクスブルク16-デュッセルドルフ17-G大阪19途~(写真◎高村美砂)