鹿島アントラーズが手にした9年ぶり9回目のJ1優勝。そこで、鈴木優磨の存在を語り落とすことはできない。12月6日の明治安田J1リーグ第38節で鹿島アントラーズが横浜F・マリノスを2-1で破った戦いを「今季の集大成」とした鈴木優磨が悲願の優勝を語る。

上写真=鈴木優磨が男泣き。ここまでの責任を背負ってきたからこその涙だ(写真◎Getty Images)

■2025年12月6日 J1第38節(観衆:37,079人@メルスタ)
鹿島 2-1 横浜FM
得点:(鹿)レオ・セアラ2
   (横)天野 純

「いつもチームのために」

 鬼木達監督の称賛の言葉こそ、鈴木優磨にふさわしいだろう。

「今日はサイドハーフでしたが、彼の一番すごいところというか尊敬できるのは、チームが勝つことを誰よりも強く願っている選手だということ。フォワードであれば当然、やりたいポジションがあるだろうけれど、勝つために何が必要かを考えて、点が必要なら取りにいくし、守るなら全力で守る。いつもチームのためというのがある選手」

 この1年、鬼木監督は鈴木に全幅の信頼を置いた。38試合すべてに起用し、そのうち37試合で先発。最後まで戦い抜いた鈴木は、胸を張った。

「ホームで戦うアドバンテージを最大限出せましたし、全員に気合が入っていて、今年の中でもトップに入るような前半でした」

 20分にレオ・セアラが先制するまでも、そのあとも、鹿島が前に前にと攻めていき、ピッチを制圧し、横浜F・マリノスに1本もシュートを打たせない、限りなく完璧に近い前半だった。後半に入ると、57分には再びレオ・セアラがゴールを奪い、終了間際に1点を許したものの2-1で勝利。

「今年の集大成という形で最後の最後に持ってこれたかな」

 チームとして描いた大きな成長曲線の最高到達点を最終節で披露したことを喜んだ。

 鬼木監督の言う通り、この試合は左サイドハーフとしてプレーした。前節の東京ヴェルディ戦では右サイドハーフ。チームの戦い方を自在に調節できるのは、鈴木の献身があってこそだった。

 それは鹿島愛の象徴でもある。スクールに通った小1から、ベルギー時代を除いてずっと「鹿島の男」。鬼木監督も「誰よりも思い入れが強い」と感じるほど、その思いをプレーで表現してきた。

 今年のチームは、鈴木をはじめ柴崎岳、植田直通、三竿健斗などヨーロッパでプレーしてから戻ってきた選手も多く、さらには最終節で輝いた松村優太や荒木遼太郎をはじめとした次世代を担う面々が一つになってチームを強くした。

「オレだったり、岳だったり、植田くんだったり、健斗だったりが、やっぱり鹿島が大好きで、鹿島の強いところを知っていて、鹿島が苦しんでいるのを見て、みんなで優勝したいという思いで帰ってきた。その選手たちの思いや、どれだけの努力をしていろいろ犠牲にしてきたかをよく知ってるから」

 経験と勢いがもたらした化学反応で手に入れた、9度目の日本一だ。

「本当に大変だったので達成感もありますし、チームとしても個人としてもなかなか難しかったから、報われたなっていう感覚にいまはなっています」

 だから、優勝の瞬間に号泣した。