11月30日の明治安田J1リーグ第37節で、首位の鹿島アントラーズが東京ヴェルディを1-0で破って、優勝へあと1勝だ。苦しみながらも1点を奪って勝ちきってしまう強さに、鬼木達監督の熱い心が宿っている。

上写真=鬼木達監督が難しい試合をも勝ちきる手腕を発揮した(写真◎小山真司)

■2025年11月30日 J1第37節(観衆:38,168人@味スタ)
東京V 0-1 鹿島
得点:(鹿)松村優太

「チャレンジしないと道は開けない」

 言葉だけではなく、本当にハードワークを貫くチームを作り上げた。鹿島アントラーズに戻って指揮を執ってきた鬼木達監督である。

「やるべきことをやり続ける。このチームが本当にハードワークし続けてるからここ(首位)にいると思いますし、最後に点を取られてもおかしくないようなシーンでも、最後の半歩、一歩というところで戻ったり、そうすることで相手のプレッシャーになったり。とにかくフリーで打たせない、そういうところなんだろうな、と」

 川崎フロンターレの監督として4度のリーグ優勝をもたらしてきた経験は強い。技術力がすこぶる高かったあのチームにも、高レベルのハードワークを求めていたからこそ、強くあり続けた。その基準は鹿島でも変わらない。

 ただ、柏レイソルが敗れて自分たちが勝てば優勝できる、という東京ヴェルディとの大一番は難しい試合になった。終始、押し込まれて、なかなか主導権を奪い返せない展開。

「選手はやっぱりね、見えないプレッシャーというか、そういうものがあったのかなというようなゲームだったと思います。スタートは前、前というイメージがありましたけど、途中からやっぱりヴェルディのゲームになりましたし」

「やっぱりもう単純に、ゴールに向かっていなかった。向かうとしたら長いボールだけになってしまった。それが悪いわけではないですけど、相手の方がセカンドボールの拾い合いでは上だった」

 ただ、良くなくても落ち着いて弾き返し続けることが勝利につながっていく、という法則は、経験からよく知っている。

「慌てることなく、というか、しっかりと自分たちのやるべきことをやって、最後にどのタイミングで仕留めていくか。そういうところは選手が非常によく共有してくれたと思います」

 松村優太、荒木遼太郎とテクニックを誇る選手をピッチに送り出すと、74分に荒木のパスからレオ・セアラがシュート、こぼれ球を松村が押し込む決勝点が生まれた。仕留めるその時を共有した一瞬に、鹿島の強みが表れた。

「途中から出た選手もしっかりとゲームに入って流れを変えてくれたし、締めてくれました。本当にいまチーム一丸となって、難しいゲームでしたけども、勝利をするという1つの目標に向かってやってくれたと思います」

 優勝に向かって、団結力という最強の武器を手に入れている。あと1試合、勝つだけだ。

「最後はもう気持ち。相手ではなく自分自身にどれだけ勝てるか、と思っています。チャレンジしないと道は開けない。ミスを恐れずに勝たなければいけない。自分たちでつかみに行こうと選手には話したい」

 冷静に戦況を見極める目だけではなく、熱い言葉で選手の心をかき立てるのも鬼木イズム。最終戦は12月6日、ホームで歓喜の時を迎えるつもりだ。