FC東京の安斎颯馬が、FC町田ゼルビアの黒田剛監督に恩返し弾だ。11月9日の明治安田J1リーグ第36節で87分に決勝ゴール。鋭いカウンターから仕留めて、このカード初勝利をもたらした。1週間後には再び天皇杯準決勝で激突する。高校時代の恩師である黒田監督の勝負強さを知っているからこそ、この勝利で警戒を解くことはない。

上写真=安斎颯馬がカウンターから確実にゴール。高宇洋に祝福されて最高の笑顔!(写真◎J.LEAGUE)

■2025年11月9日 J1第36節(観衆:46,838人@国立)
町田 0-1 FC東京
得点:(F)安斎颯馬

「全員の気持ちが乗った」

 どちらも攻撃がスムーズに運べず、ゴールに迫るシーンが少ないゲーム。安斎颯馬は69分に野澤零温とともにピッチに飛び出して、右サイドハーフに入ってFC東京の攻撃に新風を吹かせた。

 87分、左サイドからつながり、高宇洋が佐藤恵允を左前へと走らせた。そのとき、逆サイドで安斎がゴール前のスペースに指を差してアピール、ボールを要求した。そこへ、佐藤の左足から正確なパスが送られてくる。右足のインサイドで強くたたくと、横っ飛びしてきたGK谷晃生に触られたものの、ゴールネットを気持ちよく揺らした。

「ケインが抜け出した瞬間に、自分の前に空いてるスペースがありました。あそこに入ってくのは、最近はサイドバックでのプレーが多かったけれど、去年からやり続けたこと。あそこにいるのが自分の役目ですし、自分のゴールでチームの勝利に貢献できたのは良かった」

 松橋力蔵監督も、その思い切りの良さを高く評価した。

「右サイドバックが主戦場ですが、自陣に引き込まれる可能性があるので、前線で起用したのは守備を安定させる意味でも大きな役割を果たしてくれるから。攻撃の部分で思い切りの良い飛び出しや冷静さも持っていて、それが短い時間で発揮できたのは大きい」

 足が止まりがちな時間でのパワー注入には、そのポテンシャルはもってこいだというわけだ。

 安斎はフィニッシュに思いを込めた。

「簡単なシュートではなかったですけど、自分の気持ちもそうですし、その前のピンチを全員でしのいだときの気持ちも、全員の気持ちが乗ったゴールだったかな」

 これで1-0の勝利をもぎ取って、3連敗中だった町田からようやく白星を挙げた。その町田の黒田剛監督は、青森山田高時代の恩師である。まさに「恩返し弾」。

「町田戦の3連敗で人一倍、悔しい思いをしていました。今日、一つ返すことができましたけど、ここじゃないと思ってるんで」

 ここ、とは、このリーグ戦のこと。その勝利も大事だが、1週間後にまた町田と激突する天皇杯準決勝を見据えている。

「来週、今日よりも難しい試合が待っています。もう気持ちは向かっているので、また来週も今日のような景色が見られるように1週間準備していきたい」

 青森山田高時代の経験から、黒田監督はトーナメントを勝ち抜く術を知り尽くしていると実感している。

「自分が経験した中ではやっぱり黒田監督が一発勝負の戦い方を知っていると思います。今日、自分たちが勝ったことで、さらに気を引き締めてくると思いますし。カップ戦は結果だと思っているので、最後に笛が鳴った瞬間、自分たちが1点でも多くスコアを取れるように準備したい」

 狙うはもちろん「2試合連続恩返し弾」だ。