首位に立つ鹿島アントラーズは17日、J1第34節、アウェーのヴィッセル神戸戦に臨んだ。GKの早川友基にとっては日本代表の活動から戻って迎えた最初の試合になったが、チームを救うビッグセーブを見せて、勝ち点1の獲得に貢献した。

上写真=安定したプレーでチームの守備を引き締めた早川友基(写真◎J.LEAGUE)

大迫が胸トラップした瞬間に前に出た

「実際に勝ち点差は縮まってないですけど、自分たちは勝ちにいってたゲームだったんで。内容と結果はちょっと異なりますけど、そういった意味でも勝ち点3が欲しかったなっていうのが率直な感想です」

 勝ち点5差で迫る神戸とのアウェーゲーム。0−0で引き分けた鹿島の守護神、早川友基は悔しさをにじませた。

 だが、内容を振り返れば、勝ち点を手にしたことが大きいと思える。とくに前半は神戸のボール狩りと前に出る推進力に気圧され、劣勢だったからだ。

 開始3分だった。早川はこの試合のキーになるビッグセーブでチームを救った。

 右サイドから宮代大聖にクロスを許すと、飛び込んできたエリキの頭には合わなかったものの、ボックスの中央にいた大迫勇也にボールがつながってしまう。だか、鹿島の守護神は落ち着いていた。

「前にエリキ選手とテヒョンがいて、ちょっとかぶった感じだったんですけど、そこで大迫選手がヘディングじゃなくて胸トラップをした。その段階で、自分がうまく距離を詰めながら、ブロックに持っていけたのは良かったかなと思います」

 大迫がトラップした瞬間、早川は前に出てシュートコースを消した。体を一杯に広げてシュートを左足に当てる。ゴールを防ぐとともに、チームに勇気を与えるビッグプレーだった。

 その後もCKを14本与えるほど、この日の鹿島は攻められる場面が多かったが、早川はクロス対応でも安定したプレーを見せ、最後までゴールを許さなかった。

 日本代表の活動から戻ってから中2日で迎えた試合。そこにこれまで以上の難しさを感じていたという。

「正直、かなり難しかったです。皆さんも見ていて分かるかもしれないですけど、やっぱりスピード感とか、シュートのスピードもそうだし、そういうものに体が慣れたままで、こっちに来たときに、体がそれに反応してしまうというか。シュートを打たれた時に体がピクッて早く動いちゃったりするので、それをいかに我慢できるか。いつも通りのこっち側の自分に持ってかないと、なんて言うんですかね、いつものプレーに戻すところがとても難しかったです。
 あとは個人的に国内で(代表活動を)やった方が大変だと思いました。メリハリというか、移動が少ないし、時間的にもかなり短かったのでスイッチの切り替えの部分でちょっと。もちろんああいう試合(=ブラジル戦)だったというのもありますけど、難しいところはありました」

 代表活動のトレーニングでは国内トップクラスの選手たちのシュートを受け、対戦相手であるワールドカップ出場国の選手を想定し、自身のプレーを調整していた。そんな日々から中2日で迎えた大一番。これまで以上に、普段の自分を取り戻すに苦労したという。

「(相手のシュートに対して)早く準備しないといけないと思って、体が先に準備しようとしてクッと動いてしまう。でもそのタイミングで準備しちゃうと、例えば(キャッチのときの)手の感覚がズレたりとかしてしまう。この数日でそれを直すのがかなり難しかった」

 まだ代表歴が浅い早川にとっては、初めて感じる難しさだったようだ。そんな中でも、神戸を完封。引き分けは喜ばしいことではないものの、勝ち点1をもぎ取ったことをポジティブにとらえた。

「自分のやれることを出し切るだけかなと思います。正直、個人的な感覚でも、代表のスピード感とか、招集を重ねているのもありますけど、徐々に慣れてはきています。その基準を常に持ち続けながら、こっちでもプレーできる引き出しをもっともっと増やせれば。自分が失点しなければ、チームは引き分け以上になる。最低限の仕事はしていきたい」

 J1は残り4試合。最後尾で守備を引き締める早川は、鹿島の優勝に向けて代表での経験をうまくチームに還元しつつ、前進すると誓った。

取材◎佐藤景