上写真=室屋成の復帰がチームに好影響を及ぼしている(写真◎J.LEAGUE)
■2025年9月23日 J1第31節(観衆:24,412人@味スタ)
FC東京 1-0 福岡
得点:(F)マルセロ・ヒアン
「どこか消化不良のような」
「面白い試合ではなかったですね、はい」
室屋成はすべて1-0での3連勝を達成しても、破顔一笑というわけではなかった。アビスパ福岡戦では前半に先制し、そのアディショナルタイムに相手が1人退場。優位に立って後半に入った。だが、追加点はなし。
「向こうも退場者が出たのでもう少しロングボールで押し込んでくるかなと思ったんですけど、後半も最後まで引いてきていたので、自分たちがそんなにリスクを犯す場面も必要なかった。自分たちもうまく合わせながら、何回も前半と同じように回しながら、タイミングを見ながらっていう感じの試合になったので、面白い試合ではなかったですね、はい」
丁々発止、攻めて攻められ、守って守られて、最後まで死力を尽くしてぎりぎりの勝負にかける、というゲームでは確かになかった。
「まあ、最低限、ぐらいの手応えはありますけど、なんかどこか消化不良のような感覚もある」
それでも勝てた意味は、いまのチームにはものすごく大きい。
「いままではこういう試合を落としちゃうようなシーズンだったけど、(東京ヴェルディとの)東京ダービーと(川崎フロンターレとの)多摩川クラシコに続いたあとの、少しテンションが落ちるようなゲームの中でも、しっかり勝ち点3を取れたのはすごい大きいかなと」
その礎には、強い共通認識があった。
「(ビルドアップを)何回も何回もやり直して、クロスからいくつかチャンスに取れたらいいなと思ってました」
焦る必要がないのなら、焦らない。成熟したチームになりつつあるということだろう。
ところで、この3連勝は室屋が復帰してきたタイミングと合致している。第29節の東京V戦で先発し、4試合ぶり、約1カ月ぶりにピッチに立った。続く川崎F戦は84分に入って最後を締めた。そしてこの福岡戦ではフル出場。先発した2試合ではどちらも左サイドバックでプレーしている。ご存知の通り「本職」は右。
だが、代わって右サイドバックに入った選手が活躍した。東京V戦では長友佑都が迫力のある上下動とクロスで躍動し、福岡戦では安斎颯馬が決勝ゴールをアシストしている。左で室屋がプレーできるからこその2人の輝きだ。
「左も楽しくやってますし、そうやってポジティブに見てもらえればうれしいです。でも、僕の本職はやっぱり右。右の方が100パーセントやりやすいから、右でやりたい気持ちは強いです。もちろん監督が左でやってほしいということであれば100パーセントの力でやります。でも、右でならもっともっと高いパフォーマンスを出せると思うので、その日が来るのを楽しみにしてます」
本音を隠さずに、でもユーモアに包みながらチームの力になってる実感を明かす。
左では景色が違うから戸惑うこともあるが、福岡戦で言えば俵積田晃太を自由に前に飛び出させて、背後からがっちりとサポートする姿が印象的だ。
「マンツーマンの試合になったらやりやすいんですけど、ブロックを敷かれたときに、左のアーリークロスは自分にはない部分なのでね。だからもっともっと、引かれた相手でも左サイドバックらしさを出せるようにしていきたい」
というわけで、味方を輝かせながら、自らも新しい技術の習得に意欲的なのである。その経験を踏まえて右に帰ったときには、また新しい室屋成が誕生しているかもしれない。