上写真=横浜に集まった多くの新潟サポーター。試合後にその熱量を選手にぶつけた(写真◎J.LEAGUE)
■2025年9月20日 J1第30節(観衆:9,462人@ニッパツ)
横浜FC 1-0 新潟
得点:(横)アダイウトン
「くじけないようにね」
「私が止めました」
20位のアルビレックス新潟が19位の横浜FCに敗れた試合後、ゴール裏に陣取るサポーターの思いに選手たちが耳を傾けるシーンがあった。中野幸夫社長は、その場に向かおうとした入江徹監督を止めたのだという。
「寺川(能人強化部長)が行きました。監督も行こうとしたんですけど、私が止めました。私も出ませんでした。降格が決まったわけではないので、申し訳ないと思いながらも、ここであきらめるわけにはいかないし、そういった意味で頭を下げて謝る状況ではないと、私が監督を止めたのです。むしろ応援を、パワーをいただいて、次に勝つためのことを考えるべきだと思いましたので、あえて私が行くことを止めました」
寺川強化部長はゴール裏で選手と一緒に思いを受け止めた。
「本当にクラブのこと思ってくれていることがすごく伝わりましたし、本当に人生かけてというか、それほどの熱を選手たちにかけてくれたので。それが当たり前だと思わず、選手も次の試合に向けて応えられるようにやるだけです。いろいろな意見があることも分かりますし、いまはそれについて何かを言うのではなくて、次の試合まで中2日で、どういうふうにテンションを上げて持っていくか一番大事なところだと思っています」
寺川強化部長は自らが新潟の選手としてプレーして得た苦しい経験を元に、監督と選手に熱を伝える。
「監督はやっぱり『ボス』なので、もう一度、改めてみんなを引っ張っていって、先頭に立っていこうと話しています。彼がボスなので、くじけないようにね。そして本当に、次の名古屋戦に向けて奮い立たせてほしいと思っています」
「選手にも言えることは伝えたいと思いますし、一度、少し前に話はしています。もう本当に基本的なことです。走るとか戦うとか、そういうことが本当にまず大事だと伝えました」
一方で、フットボールである以上、熱量ばかりに頼りすぎてピッチの上で冷静さを欠くのでは本末転倒だ。冷徹に見極めてプレーすること(させること)も、「熱量」の別の形なのではないか。
「冷徹といっても、もちろんいま何かがダメだと言ったところで、それがプラスに働くとは思えません。ただ、こうした方がいいんじゃないか、ということを伝えることはあります」
寺川強化部長はそのマネジメントの難しさをそう表現した。
これでここ11試合で1分け10敗。「ボス」である入江徹監督の表情は硬い。
「大事なゲームだと分かっていました。最後のところで得点という形に結びつけられず、こういう結果になってしまった。関係性や質の部分、お互いのコンビネーションのズレがあった。それで最後のところに結びつかなかった」
シュートは相手を上回る14本を放っていて、10本のCK、17本の直接FKも同様に相手より多かった。だが、横浜FCの堅陣を崩すことはできなかった。
クラブづくり、チームづくりは難しく、崩れるときはあっけない。残り8試合の結末がどうなろうと、クラブの価値まで毀損してしまうことだけは避けなければならない。チームのボスが監督なら、クラブのボスは中野社長である。どんな行動に出るのか。
「いまは監督を変えると考えていません」
そして、経営者としては未来を見据えながら、いまを生き抜くしかない。
「20チームでの競争の世界です。勝ち、引き分け、負けがある中で、現実の順位というものがあります。まだ結果が出ていないので頑張るしかないと思っていますが、常にもっと高みを目指すためには何が必要なのか、この現実も踏まえて、この経験を無駄にしないようにしなければならない。そのためにはいま、順序としてまずはあきらめないこと。次に全力で戦うこと。そうしていく中で、いい結果、あるいは悪い結果が出てきます。それをまた振り返りながら、チームを成長させるために経験としてちゃんと現実に向き合っていきたいと思っています」