上写真＝決勝ゴールを挙げた田川亨介（左）をアシストした鈴木優磨が祝福。チーム力の高まりを感じさせるゴールだった（写真◎Getty Images）
■2025年8月10日 J1第25節（観衆：40,939人＠味スタ）
FC東京 0-1 鹿島
得点：（鹿）田川亨介
「交代選手がどれだけ勢いをもたらすことができるか」
「総力戦と呼ぶにふさわしいゲームだったと思います」
鹿島アントラーズの鬼木達監督が、激しい90分を勝ちきった選手たちを称えてそう総括した。FC東京にチャンスが多かったものの耐えて0-0で時間を進め、交代でピッチに立った田川亨介が81分に決勝ゴール。随所に勝負どころを逃さない鹿島らしさにあふれた勝利になった。
決勝点のシーンが象徴的だ。
右サイドのスローインからつないで樋口雄太が右へ。受けた鈴木優磨がワンタッチで中に送り、ニアに入ってきた田川亨介が蹴り込んだ一発。鈴木はそこで流れを引き寄せたチーム力を自画自賛する。
「今日ぐらいの暑さだとスローインやセットプレーは集中力が切れやすい。それは僕たちもなんですけど、一瞬、気が抜けるんですよね。そういったスキは逃すなと話していますし、うちもこれまでスローインから点を取られているシーンが多かったので、逆にそこを突けたのは大きいと思います」
スキを見せずにスキを突く。なるほど、失敗を生かして成功につなげることで、鹿島が「超鹿島」になってきた。
「もう迷いはない。自分たちのやるべきことは定まってきている。それを信じてやるだけです」
鈴木はきっぱりと言い切った。決勝点を決めた田川も同じ力強さでチームの結びつきの強さに胸を張る。
「今日みたいに前半に耐えなきゃいけない時間帯が多くなってくると後半勝負になってくる。その中で交代選手がどれだけ勢いをもたらすことができるかはこれからもっと大事になってくる。サブの選手も全員がそれを分かっていて、実際にできているから、継続してやっていきたい」
先発かベンチかにかかわらずに一丸になっているチームのポジティブな雰囲気は、こうやってにじみ出てくるものだ。
自分のできることに集中する選手たちが、まとまりのあるチームを形成し、苦しい試合をものにしながら進んでいく。鹿島の進化の過程を、いままさに目の当たりにしているだろう。
「相手を圧倒して3-0、4-0で勝ちたい気持ちもあります。でもやっぱり、こういう泥臭い試合をなんとか勝ちに持っていけたのは、チームとしてもいい傾向にあると思います」
鈴木は改めて断言する。これで首位に返り咲き、鬼木監督は「自分たちが首位の座を守るというよりも、突き進んでいく強い気持ちを持っていきたい」と引き締める。2016年以来、眠っていた名門クラブがついに目を覚まそうとしている。