横浜F・マリノスがイングランド・プレミアリーグのチャンピオン、リバプールを迎えた一戦で、植中朝日が先制ゴールを決めてみせた。植中にとって少年時代からの憧れのクラブから奪ったゴールは「思い出」となったが、それ以上にその強さに感じる刺激があった。

上写真=55分、植中朝日が大好きなクラブから先制ゴール!(写真◎J.LEAGUE)

■2025年7月30日(観衆67,032人@日産スタ)
横浜FM 1-3 リバプール
得点:(横)植中朝日
   (リ)フロリアン・ヴィルツ、トレイ・ニョニ、リオ・ングモハ

憧れはフェルナンド・トーレス

 植中朝日が、リバプールから、見事に先制ゴール!

「世界で一番好きなチームなので、点を取ってやろうと思っていました。これまでにないような感情だったので、何とも言えないです」

 集まった6万7032人の前で興奮を隠せないままに話したが、ミックスゾーンでは「マリノスの次に好きなクラブ、って言えばよかった…」と真面目に反省するあたりが礼儀正しい。

 好き、という気持ちは生粋で、話は少年時代にさかのぼる。

「小さい頃からずっと、リバプールのフェルナンド・トーレス選手が好きで、リバプールの財布を使ったりしていたので、対戦が決まってからずっと楽しみにしていました。ゴールも決めることができてうれしいです」

 ピュアな笑顔が広がった。

「兄がサッカーをやっていたので、一緒にテレビを見ていて、だからもう物心ついたころには、フェルナンド・トーレス選手が好きになって、そのチームがリバプールで、と、どんどんのめり込んでいきました」

 後半から入った植中は55分、左の井上健太から中央の加藤蓮に入ったときにはもうスイッチを入れ、一気にギアを上げて中央から左斜め前に走り出していた。そこに加藤からのおあつらえ向きの縦パスが入ってきた。腰を入れて左足を振って、ダイレクトでボールをゴール右に送り届けた。

「2列目から入っていけば相手は捕まえづらいのは分かっているので、出ていこうと思った動きがゴールにつながりました。コースが見えていたというか、感覚で打った部分も少しはありますけど」

 憧れのクラブを相手に先制ゴール。でも、あえて喜びは控えめだった。

「浮かれすぎるのもどうかなと思ったので、ちょっと消極的なパフォーマンスになってしまいました」

 キャプテンマークを左腕に巻いたことも、気を引き締める一因になった。

「キャプテンマークを巻いたことはほぼないですしね。今日のミーティングでメンバーが発表されるときに、後半からのメンバーで自分のところにキャプテンの印が書かれていたんです。ちょっとみんなからいじられましたけど、でも、こんな機会にやらせてもらうこともないですし、ちょっと恥ずかしがりながらも、こうやってゴールも決められましたし、思い出に残る試合になりました」

 とはいえ、思い出に浸るだけにするわけにはいかない。J1では降格圏からまだ脱出できていないし、リバプールとの、つまり世界のトップが走る先頭までの距離がいかに遠いか、改めて思い知らされたのだ。

「肌で感じたらやっぱり2段階、3段階、それ以上に違いも感じました。自分たちのレベルはまだまだだなっていうのは痛感させられました」

 相手はプレシーズンでありながら、強度もスピードも想像の上をいっていたという。それは自分が武器としてきたはずのものだけに、衝撃も大きい。

「自分も強みにはしているところですけど、強度は全然足りないなと思わされました。球際で削るぐらいの勢いで相手はボールを奪いに来ていたので、そこは自分も求めていきたい。刈り取ってくるような感じでしたし、何気ないところで体をぶつけられても本当に体が固くて吹っ飛ばされそうなシーンもあったので、すごいですね」

 その教訓を、J1とルヴァンカップの残りの試合に生かさなければ意味はない。本当は2番目に好きなクラブから大いなる刺激を得て、絶対に残留してみせる。