7月30日、明治安田Jリーグワールドチャレンジ2025で、イングランド・プレミアリーグのチャンピオン、リバプールが横浜F・マリノスと親善試合を戦った。試合はリバプールが3-1で逆転勝利を果たしたが、世界のスーパースターと並んでやはり人気だったのは遠藤航。故郷に錦を飾った最高の時間を笑顔で振り返った。

上写真=遠藤航がスター軍団の先頭に立って、故郷に錦を飾った(写真◎Getty Images)

■2025年7月30日(観衆67,032人@日産スタ)
横浜FM 1-3 リバプール
得点:(横)植中朝日
   (リ)フロリアン・ヴィルツ、トレイ・ニョニ、リオ・ングモハ

スロット監督が粋なはからい

 ビジョンにその姿が映るたびに大きな大きな歓声がスタジアムの中でうねり、それが最高潮になったのが60分のことだ。遠藤航がいよいよピッチに出る、その時。

 フィルジル・ファンダイクに代わって登場すると、キャプテンマークを託されて左センターバックに入った。このタイミングで交代したのは一人だけで、遠藤にスポットライトが当たるようにした、いわば「一人舞台」。アルネ・スロット監督の粋なはからいである。

「監督にはハーフタイムに言われました。みんなで一緒に入るのかと思いましたけど、監督もたぶん僕に気を使ってくれたのかな。昨シーズン、出番が少ない中でも常に全力でやる姿勢を評価して、リスペクトを持っていた、というような話をしてくれたので、それはうれしかったです」

 試合前の選手紹介のときから遠藤への歓声は盛大だった。「そのときは僕はまだピッチにいなかったと思うんですけど、うれしい気持ちももちろんあるけど、みんな、サラーとかファンダイクに会いたいのかなと思ってました」と謙遜も。それでもやはり「リバプールの遠藤航」の人気は絶大だった。

「個人的にはすごくうれしかったですね。リバプールの選手として、こうやって日本に、自分が生まれ育った町に帰ってくることができたのは、すごく素晴らしいというか、誇らしい瞬間だと思いました。日本に行きたいって言っていた選手もいてすごく楽しみにしてくれていたので、そこも良かったですね」

 見事な凱旋を果たしたこの夜、最初に左、次に右のセンターバックに入り、危険なシーンもほとんどなく、空中戦で完勝すれば、ボールにうまく休みを与えたり、あるいは最終ラインから軽やかに持ち運んだり、ときにはルーレットで相手をいなすなど見せ場を作りつつ、無難に試合を落ち着かせた。3つのゴールが生まれたのは遠藤が入ってからで、「僕は何もしてないけど」と笑ったが、逆転勝利で終えると勝利のシャーレも掲げて、笑顔を故郷に振りまいた。

 昨季はプレミアリーグ優勝の一員となったが、出場時間は限られ、試合終盤に登場する「クローザー」としての役割で地元のファンの心をつかんだ。来る新シーズンにどんな景色を描くのか。

「もう1回、またプレミアのタイトルを取りたいと思ってるし、その他のチャンピオンズリーグやカップ戦も、取れるタイトルは全部取りたい。みんなそうやって意気込んで挑みますし、でもタイトルを取ることは簡単ではないこともしっかり自分たちの中で受け入れながら、地に足をつけてやらなければいけない」

 だから改めて、リバプールという超一流クラブのメンバーとして、自分を見つめていく。

「チームの一員としてしっかり貢献するところを、第一に考えてやっていければいいと思いますし、監督と1年を過ごしてきていまの僕のことはよく分かってくれていると思いますし、僕ももちろん監督のことは分かっている。そういった意味で、また違ったシーズンになるんじゃないかなっていう思いです」

 アジアツアーを終えたチームは、8月5日のアスレチック・ビルバオ(スペイン)とのフレンドリーマッチ、鎌田大地のいるクリスタルパレスと戦う10日のコミュニティーシールドを経て、16日のボーンマス戦で新しいシーズンが始まる。そしてその先には、日本代表のキャプテンとして挑む北中米ワールドカップが待っている。

「いまはそこをあまり考えすぎなくてもいいとは思っていて、とにかく目の前の1試合1試合に勝つことだけ、チームに貢献することだけを考えたいと思います。個人的には、もちろんワールドカップに向けてもそうだけど、毎試合毎試合、ベースのコンディションで挑めるだけの準備やトレーニングを自分の中で考えながらしっかりやって、いいシーズンをリバプールで過ごして、最高の形でワールドカップに挑めればいいと思います」

 遠藤航が世界一を目指すシーズンが、いよいよ始まる。