上写真=厳しい表情でサポーターに向き合う鈴木優磨。3連敗に反省は尽きない(写真◎J.LEAGUE)
■2025年7月5日 J1第23節(観衆:23,675人@U等々力)
川崎F 2-1 鹿島
得点:(川)伊藤達哉、マルシーニョ
(鹿)レオ・セアラ
「迷惑をかけてしまった」
「もう一度、やり直します」
8年に渡って監督として素晴らしい時を過ごした「等々力」に初めて帰ってきた鬼木達監督は、いまの自分のチームである鹿島アントラーズを勝利に導けなかった悔しさをにじませた。
川崎フロンターレを相手に先制しながら逆転負け。前節と同じパターンだ。
リードを奪ったのは25分のこと。キム・テヒョンが自陣左から斜めにロングキック、松村優太が抜け出して、GK山口瑠伊を引き付けておいて横に出し、レオ・セアラのゴールをお膳立てした。
「背後を取る数のことは監督からも言われてましたし、しっかり前に入ることができてアシストを残すことができて、あのシーンは良かったなと」
松村はマークについていた三浦颯太が一瞬、足を止めた空白に、俊足を生かしてぐっと前にアクセルを効かせた。
「僕は後ろからでも勝てるんじゃないかというのは、スタッフと話す中でありました。走るタイミングを意識していて、あそこも最初は僕の方が後ろだったんですけど、間を突きながら抜けて走ることができました」
長いパスでひっくり返してそのままゴールへ迫る作戦が、まんまと的中した。ただ、これが伏線になってしまったのかもしれない。
「もちろんまずは背後というのは狙いではありますけど、それがゼロか100かではダメだと思います。舩橋(佑)選手と知念(慶)選手とも話しましたけど、彼らもあまりボールを触っていないと思う」
長いボールだけに頼ってしまった。そうなればボールを失いやすくなり、相手も簡単に対応できてしまう。45+4分、58分に失点してしまう。
「ロングボールが多くなった要因が、もう失点したくないっていう感情なのか、もっと裏から入ろうっていう感情なのか。僕自身も含めて、もう少し足元で受ける外し方とか立ち位置を考えて、もっと受けて落ち着かせる場面があってもいいかなと思いました」
蹴り出すことに逃げているのでは、という違和感もあったというわけだ。メンタルの問題。
知念は自陣でボールを失って逆転ゴールのきっかけを作ってしまったことに「迷惑をかけた」とうなだれた。そして、続ける。
「自分たちもちょっと圧力を感じすぎて、前半は背後にいけていたから背後ばっかりになってしまった。そこは使い分けないといけないという課題が継続しちゃったなと」
強気で鳴らすこのチームには珍しく、長いボールを蹴って相手に渡し、受けに回ることで悪循環に陥った。
鬼木監督もベンチから同じことを感じていた。
「長いボールもそうだし、短いボールも織り交ぜないと、苦しいゲームになります。その使い分けがまだまだ浸透しきれてない。そこは自分のところでコントロールしなきゃいけないのと、選手が試合の中で相手が何を嫌がっているかをもっともっと感じられれば。自分たちがボールを握った方が相手は嫌がるはずなので、そこの勇気が足りなかったとも思っています」
ボールを受ける勇気。その欠如をずばりと言い放ったのはもう一人、鈴木優磨である。相手チームのサポーターから大ブーイングを受けながらも戦う姿勢を貫いたが、盛り返せなかった。
「やっている選手が考えてやらないと強くならない。最後の20分は、オニさんが監督になってから最も無駄な時間だった。そもそもトライすらしていない」
それでも、連続の逆転負けという屈辱から何かを手にしなければ前に進めない。
「2試合連続でこの結果ということは、何かしらのヒントが与えられているんだと思う」
J1は中断に入り、次は7月20日。自分たちに代わって首位に立った柏レイソルを迎えるビッグゲームだ。好調の彼らをここで直接たたけるチャンスが巡ってくるのは、幸運だと考えることもできる。それまでにヒントを見つけ、課題をクリアし、もう一度立ち向かう。