明治安田J1リーグ第1節が15日、各地で開催され、ニッパツ三ツ沢球技場では横浜FCとFC東京が対戦。61分に白井康介がゴールを決めてFC東京が勝利を飾った。前半、機能不全に陥っていたチームはなぜ後半、ゴールをこじ開けることができたのか?

上写真=左足で決勝ゴールを生み出したFC東京の白井康介(写真◎J.LEAGUE)

狙いをしっかり表現できたかな(高宇洋)

 前半はFC東京が今季から採用する3−4−2−1のフォーメーションが機能せず、チームとして前進することができかなった。縦パスが入らず、相手の守備組織を崩すことも、攻撃をスピードアップすることもままならなかった。

 ハーフタイム、松橋力蔵監督は選手に「少し蹴り過ぎだ」と伝えたという。ピッチ状態が悪く、パスが引っかかることを恐れてロングボールを多用した面もあったようだが、クサビのパスを中に打ち込んでから外へ展開する形やコンビネーションで中央を破るようなシーンは皆無だった。

 松橋監督の指摘を受けた後半、まずボランチ2人の意識が変わった。前半はたびたび3バックの脇に降りてビルドアップを安定させることに注力していた高宇洋はより高い位置でプレーすることを心がけ、小泉慶もバランスを取るだけではなく、積極的にボールに触れてリズムを生み出そうと努めた。その結果、チームの重心も高くなった。

 そもそも3−4−2−1のメリットは2シャドー+2ボランチの4人が中央にいることで、ピッチに中央エリアで厚みを出せる点にある。出発点こそ敵陣右サイドで得たスローインだったが、得点シーンではその4人がしっかり絡んで相手の守備組織を真ん中から崩すことに成功した。ボランチの2人が積極的に高い位置を取り、前線とリンクすることを意識した結果だろう。

 右ウイングバックの白井康介が投げ入れたボールを右シャドーの仲川輝人が受けて、すぐさまリターン。ボールを引き取った白井は、近づいてきた小泉慶に横パスを送った。

 この直前、小泉は一度ボックス内に入り、相手マーカーを引き連れてボックス外に向かって動き出している。そのことで白井が走り込むスペースを生んでいた。

 パスを受けた小泉は相手マーカーを背にしたまま、すぐ後ろにサポートに来た高宇洋に丁寧に落とす。そして高は迷わずペナルティーアーク付近に右足ダイレクトでボールを入れた。

 前半はほとんど見られなかった連動。複数人の描く絵がこの瞬間に重なり合っていた。

 高が振り返る。

「前半はタワラ(俵積田晃太)が(外に)張っているイメージがあったので、ハーフタイムにちょっと落ちてほしいと伝えて。あのクサビのパスは(1トップの)ヒアンの手前にあいつが入ってきて、(白井)康介くんが潜るという形ができていた。狙いをしっかりと表現できたかなと思います」

 高がダイレクトで放ったパスは、ペナルティーアークに落ちてきた左シャドーの俵積田に届き、俵積田も意図を感じてダイレクトでボックス内にパスを出した。

 ボールの行き先には右サイドから走り込んでいた白井がいた。

「スペースが空いているのも認知できましたし、ボールを良いところに置いてくれたので、あとは足を振るだけでした」

 白井が左足をしっかり振り、FC東京を勝利に導くゴールが生まれた。

「(複数人が絡む場面は)ほとんどなかったですが、1回でもそれが出て、得点を生み出して、その得点をしっかり全員で最後まで守り切れたという部分では、非常に良いゴールだったと思います。その上で、もちろん相手のチャンスもあり、我々にとってはピンチでもありましたが、しっかり最後まで諦めずに守り切ってゼロで抑えた。初戦の硬さだったりプレッシャーもある中なので、僕はそこをしっかりと評価したいなと思っています」

 松橋力蔵監督は、そう言って勝利をつかみ取った選手たちを称えた。

 3−4−2−1で戦ったのは、この試合を含めてもまだ数えるほどだという。3バックの左右のセンターバックの持ち出しによってマークのズレを生むプレーや、仲川&俵積田を2シャドーに起用したことで可能となる鋭利なカウンターはほとんど見られなかった。システム上のメリットを生かし、それぞれの選手が持つ特長を発揮できるようになるには、もう少し時間が必要だろう。

 ただ指揮官が言う通り、シーズン初戦で意図を持った連動によってゴールをこじ開け、しかもそれが勝利につながった意味は大きい。進む道の先に、成功が待っていると予感させるからだ。

 次戦、FC東京はホームでFC町田ゼルビアと対戦する(22日/@味の素スタジアム)。堅守を誇る相手からゴールを奪い、さらなる可能性を示せるか、注目される。

取材◎佐藤景