明治安田J1リーグ第36節で、首位のヴィッセル神戸は11月10日、アウェーで東京ヴェルディと対戦した。開始7分で首尾よくセットプレーの流れから先制した神戸は、安定した戦いぶりで時間を進めた。しかし90+1分、オウンゴールで追いつかれて勝ち点2を取りこぼす格好になった。

上写真=神戸ゴール前での攻防。神戸は逃げ切れなかった(写真◎J.LEAGUE)

■2024年11月10日 J1第36節(観衆21,709人/@味スタ)
東京V 1-1 神戸
得点:(東)オウンゴール
   (神)山川哲史

2点目が遠く…

 神戸は大迫勇也、酒井高徳という主力を2人とも負傷の影響で休ませたが、それでも安定していた。

 試合を動かしたのは、開始からわずか7分のこと。右CKのこぼれ球を山川哲史が胸トラップからボレーシュート。これがゴールに飛び込んで早々にリードした。アウェーチームにとっては理想的な形での先制ゴールだ。

 そこからの神戸には無駄がなかった。中盤の中央で横並びになった井手口陽介と扇原貴宏のボランチが快活で、東京Vのパスをことごとく回収していく。例えば相手のサイドチェンジに対しても、神戸は揃ってきちんとスライドして対応し、むしろ東京Vのほうが間に合わずにサポートできないシーンが続いた。

 だから、後半の見どころはその堅陣を東京Vがどう崩していくかにあった。後半開始から山見大登を投入し、動きを増やして前線を活性化させた。その後も染野唯月、松橋優安、松村優太とアタッカー陣を投入し、ボランチの齋藤功佑と森田晃樹、FWの木村勇大を除くフィールドプレーヤーはすべてポジションを入れ替え、さらに3-4-3から4-4-2にフォーメーションを整え直して攻め立てると、少しずつゴールへ向かう矢印が増えていく。

 そしてついに、神戸の堅陣を破った。90+1分、左にポジションを移していた山見がファーへクロスを送ると、神戸のマテウス・トゥーレルが伸ばした足に当たってゴールに吸い込まれ、土壇場で1-1の同点に追いついた。

 神戸から見れば、痛恨の失点。「相手に気持ちよく持たせてしまったのが反省点」とは吉田孝行監督で、選手たちもボールの奪いどころが低くなったことを悔やんでいて、安定していたが、安定しすぎたゆえの失点だったと言えるかもしれない。

 試合終了の笛が鳴ると、神戸の選手たちはピッチに崩れ落ちた。連覇へ向けて勝ち点3を取り逃がしたが、この試合の後に2位のサンフレッチェ広島が敗れて勝ち点差が3に広がったのは不幸中の幸い。マテウス・トゥーレルは「僕のせいで失点してしまい責任を感じる。でも、下を向いている時間はない。残り2試合、仲間のために戦う」と目に力は宿ったままだ。