浦和レッズが苦しんでいる。10月19日の明治安田J1リーグ第34節で、東京ヴェルディに逆転負けを喫して4連敗。27分に渡邊凌磨が決めたクリーンシュートは「父の予言」の通りだったのだが、勝利に結びつかずに表情は硬いままだった。

上写真=27分に左足を振って決めた渡邊凌磨の先制ゴールは、劣勢の浦和にとって大きかったが…(写真◎J.LEAGUE)

■2024年10月19日 J1第34節(@味スタ/観衆27,886人)
東京V 2-1 浦和
得点:(東)綱島悠斗2
   (浦)渡邊凌磨

ハットトリックも年間最優秀ゴールも

「このスタジアムは相性がいいんだよ。特に、あっちのゴールはね。ハットトリックしたときも全部向こうのゴールだし、年間最優秀ゴールを決めたのもそう」

 試合前にこう「予言」したのは、先制ゴールを決めた渡邊凌磨の父、亙さんだ。27分、ペナルティーエリアの外から左足でたたき込んだ本人の喜びは少し控えめだったが、スタンドで見守っていた父は立ち上がってガッツポーズ、派手に雄叫びをあげた。

 2021年から3シーズン、FC東京で戦って、この日の味の素スタジアムをホームにして活躍してきた。父の言う「あっちのゴール」とはメーンスタンドから見て左側、ホームのサポーターが陣取るNエリアのほう。ここで、2022年10月12日のセレッソ大阪戦で3つのゴールを決めたし、23年4月15日の同じくC大阪戦で決めたアクロバティックなボレーシュートが年間最優秀ゴール賞に輝いた。

 そしてこの日も、そちら側のゴールを割った。

 27分、松尾佑介のプレッシャーで相手がボールをこぼすと、それを拾った渡邉はゴールへ向かった。相手が距離を詰めてこないと見るや、右足で外側にまたぐシザースから左足の前にボールを置き、リラックスして左足を振った。勢いを得たボールがゴール左へと飛び込む鮮やかな先制ゴール。劣勢だったチームの前半唯一のシュートであり、チームとして4試合ぶりのゴールでもあった。

 この日の渡邉は4-2-3-1システムの右サイドハーフでスタート。39分に小泉佳穂が退くと代わりにいつものトップ下に入った。70分に登場したチアゴ・サンタナとブライアン・リンセンが2トップになると、今度は原口元気に代わってボランチに入り、79分にはサミュエル・グスタフソンにそのポジションを任せて、松尾佑介に代わって左サイドハーフを務めた。

 1試合でこなしたのは4つのポジション。高いユーティリティー性と信頼感の表れで、31試合、2756分の出場がチームトップであるのもうなずける。

 しかしこの日は、後半に2ゴールを許して逆転負け。渡邊の言葉は少ない。

「勝ちにつながらないゴールは何の意味もないと思うんで、あんまり覚えてないですけど、次につながればいいかなと思います」

 消化試合数が2試合少ないながらも、降格圏とはわずか勝ち点4差の16位。勝利に強烈なこだわりがあって、だからこそ黒星には人一倍、敏感だ。その秘めた思いが残り6試合で浦和に勝利をもたらすことはできるか。