東京ヴェルディが4連勝だ。J1では実に21年ぶりの達成となったが、その種は城福浩監督によって蒔かれていた。DF綱島悠斗、林尚輝、MF齋藤功佑、見木友哉、FW木村勇大、山見大登、染野唯月…と成長株の名前を挙げればきりがない。

文◎国吉好弘

上写真=城福浩監督がチームを作り、選手たちがその期待に応えている(写真◎J.LEAGUE)

競争激化で選手層に厚み

 東京ヴェルディは9月22日のサガン鳥栖戦で2-0の勝利を飾った。これが実に、2003年以来となるリーグ戦4連勝になった。順位も6位として、来季のAFCチャンピオンズリーグへの出場も視野に入るところまで上げている。

 もっとも城福浩監督の視線にブレはない。「シーズン前にJ1残留という目標を掲げましたが、それ以外は一切具体的な目標を口にしていない」「日々我々がやるべきことをやって、他よりも厳しい練習をやって、高いレベルの競争をやって、ピッチに出た選手がやるべきことをやる。この繰り返しでしかないです」と変わらずに話して、あくまで次の一戦に向けて全力で臨み、チームと選手一人一人が成長することだけを見据えている。

 当初の目標が残留であったことにも表れているように、昨季のJ2では3位で、プレーオフを勝ち上がって昇格してきたチームに大きな期待がかけられていたわけではない。戦前の予想でも残留争いに加わるという見方が多かった。

 ところがシーズンの半分を終えた時点で10位につけ、それでも十分に健闘していると見られていたのだが、そこからチームはさらに成長して現在の順位にまで上がってきた。ハードワークをベースに一切の妥協を許さない指揮官の姿勢、チーム作りが確実に浸透してきた証拠だろう。定評ある育成組織の出身も多く、もともと技術レベルは高い選手が多かったのだが、やや欠けていた戦う姿勢やあきらめないメンタリティーが植え付けられた。

 この日も「もっと相手陣内でのプレーを多くしなければいけない」と城福監督が話したように、90分を通じて良い内容だったわけではない。「一歩早く動く」「ギリギリのところで足を出す」といった、集中力を切らさず全力で尽くすプレーで、粘り強く守って無失点に抑え、セットプレーを生かして得点を奪い勝利を引き寄せた。

 4連勝とチームが成長している中で、シーズン序盤に指揮官が問題点として挙げていた「選手層の厚さ」も大きく改善されてきた。DF綱島悠斗、MF齋藤功佑、FW山見大登らがレギュラーの座をつかみ、見事なプレーを見せているのだ。

 中でもこれまでボランチでプレーすることが多かった綱島は、この4試合では3バックの一角で起用されて連勝に大きく貢献している。

 3バックの右が多いが左でもプレーでき、鳥栖戦でも前半は右、後半は左でプレーした。この日も鋭いインターセプトから攻め上がり、攻撃に加わるプレーを何度も見せてチームを活性化。4連勝の始まりとなった鹿島アントラーズ戦でも自陣からドリブルで持ち上がって山見の先制ゴールをアシストした見事なプレーがあったように、チームに新たな武器をもたらしている。188センチの長身で技術も確か、中盤でプレーしていただけに繰り出すパスも的確かつミスが少ない。ダイナミックなプレーはさらにスケールの大きなプレーヤーへと成長する期待を抱かせる。

「おそらく彼は、できるだけクリアをパスにしようとしている。われわれがボールを大事にしていくという意味では、ボールを運ぶのもその内の一つですし、彼はそこの推進力があって、ヘッドアップしていろいろなところが見えるという意味では、最終ラインでプレーすることによって、彼のストロングがふんだんに出せているなと思います」

 城福監督も成長に手ごたえを感じていた。

 齋藤のハードワークと攻守に的確な予測によるプレー、この日はやや精彩を欠いたもののここ4試合で3ゴールを決め、スピードと切れのあるドリブル、シュートに磨きをかけた山見のプレーも注目に値する。1トップに定着した感のある木村勇大はハードワークする中で、前線でボールを収める技術などにも長足の進歩を示してゴール数も増やし、ストライカーとして覚醒した感もある。

 チームの中心であり、キャプテンも任される森田晃樹でさえ、第17節で負傷すると復帰ししてもなかなかスタメンには戻れず、城福監督の設定する基準に戻るまで4試合の途中出場を繰り返さなければならなかった。

 そんなチーム内の競争が、確実に個人個人の意識とレベルを上げている。これまでスタートからプレーすることの多かったDF林尚輝、MF見木友哉、FW染野唯月らも出場機会を得ればポジションを取り返すべく奮闘している。各選手の成長で確実にチームの選手層は厚くなっている。

 次の試合に向けても指揮官は「魂を持って出し切る」と手綱を緩めることはない。残り7試合、成長を止めない東京Vのプレーを見るのは楽しみだ。