連勝を果たしたFC東京の中盤で、東慶悟と高宇洋が構えていた。9月21日の明治安田J1リーグ第31節で浦和レッズとの難しいアウェーゲームで2-0で完封勝利を果たした。ボランチコンビはいかにして試合の流れを手の内に収めたのだろうか。

上写真=高宇洋(左)と東慶悟(右)がFC東京の中盤で全体をコントロールした(写真◎J.LEAGUE)

■2024年9月21日 J1第31節(@埼玉/観衆41,379人)
浦和 0-2 FC東京
得点:(F)オウンゴール、荒木遼太郎

「経験のある選手がコントロールしないと」

 4カ月ぶりにゴールを決めて勝利の立役者になった荒木遼太郎が、連勝を果たしたいまのチームをこんな言葉で表現している。

「ボランチのヤン(高宇洋)と(東)慶悟さんが2人でコントロールしてくれているので、自分たち前の選手はそこに従いながらというか、つられながらやっている感じです」

 9分にオウンゴール、17分に荒木のPKが決まって早々に2点をリードした。そこからの試合運びは大胆すぎてもいけないし、慎重すぎてもいけない。その絶妙の舵取りを、ボランチの2人が担ってくれたという感謝だ。チームの誰が基準を示すのか、FC東京ははっきりしていた。

 それをよく示すシーンが、前半のアディショナルタイムにあった。浦和レッズに右に左にとボールを動かされながら、FC東京の選手たちはFWのディエゴ・オリヴェイラさえも自陣深くに戻り、守備のポジションを明け渡すことはなかった。じれた浦和が選んだのは、2本のミドルシュート。いずれも枠を大きく外れた。集中守備の勝利である。

「まず危ないところには入れさせていないですし、ミドルシュートに対しても完全にフリーにさせずに、危ないところでしっかりと寄せ切れてるので、そこは良かったかな」

 高宇洋は胸を張る。守備で試合をコントロールできたことについては、東慶悟も自分たちを高く評価することに躊躇はない。

「そうさせられた部分ももちろんあるんですけど、2点をリードしていたこともあるし、ああならないのは理想です。でも、相手もいるスポーツであればああいう時間もあるというところは割り切りながら、そこでやらせないことを含めてプレーできたことが大事な部分だと思います」

 割り切り、がキーワードだろう。2点をリードすれば慌てて攻め急ぐ必要もなく、とはいえ3点目を奪う意志は見せ続けて、相手に緊張感を強いる。そのテンポの出し入れをボランチの2人が適切に調整していたのだ。

「こっちから崩れる必要はないし、うまくゲームをコントロールしながらやることもサッカーでは重要です」

 とは東の言葉だ。前節の名古屋グランパス戦で4-1で勝利を収めてこれで連勝となったが、この2試合で東が先発していることと無関係ではないだろう。その効果を強く実感するのが、ボランチのパートナーである高だ。

「今日はレッズさんのプレスや守備の構築に対して後ろに重くなりすぎずに、慶悟くんを少し高い位置にして、自分がアンカー気味に配置しようと話はしていました。それでうまくボールを支配しながら押し込む形もありましたし、そこからゴール前に入っていくこともありました。それに加えて、センターバックを含めリスク管理のところを徹底してできたので、いいバランスでできたかなと思います」

 このコンビでもう一つ、浦和に対して仕掛けることができたのは、前で守備ができたことだと高は誇る。東を前に押し出す意図がありながら、逆に東を後ろに控えさせて高が思い切り前に出て、ペナルティーエリアの中に入っていく動きも効果的だった。

「奪う位置が5メートル、10メートル高くなっていると思います。今日は特にグスタフソン選手がレッズの肝だと思っていたので、なるべくいい形で触らせないようにしてうまく奪えるシーンもありました。勝ち点が取れなかった時期は、自分たちがちょっと低いラインで構えすぎていたと思うので、まずは前から行こうということが徹底できていると思っています」

 東は、ピッチの中で最適な判断を選手自身が選びながら実行できていることが、好リズムに基づく連勝の要因だと考えている。

「監督がということではなくて、選手たちでピッチの中でできているという感じですね。もちろん相手があることですけど、試合状況や点差をしっかり判断してどういうプレーをするかがフットボールにはすごく重要なこと。それはまだまだやれると思います」

 それがボランチの2人だけで完結せずに、ピッチ全体に正しい判断がつながっていくことで勝利にたどり着くのだという正義を実践してみせた。

「ゲームの入りだったり終わらせ方、そういうところでの集中を求め合う声もあります」とは高。「中でもしっかり話をして。もちろん僕たち経験のある選手がコントロールしないといけないし、そこも自分の役割だと思っています」と東。

 どちらも、3点目を奪えなかったことへの反省を強い口調で示していて、ピッチ内での緊密さはボランチ2人を基準にしてぐんぐんと高まっている。