上写真=楽しかったという鈴木優磨との勝負。齋藤功佑が勝利の立役者になった(写真◎J.LEAGUE)
■2024年8月25日 J1リーグ第28節(@味スタ/観衆24,814人)
東京V 2-1 鹿島
得点:(東)山見大登2
(鹿)鈴木優磨
「次は自分が点を取れるように」
東京ヴェルディが鹿島アントラーズから奪った2点目のシーン、齋藤功佑には「見えて」いた。
1-0でリードしたまま迎えた75分だ。飲水ブレイク明けの最初のプレーで自陣のFKからGKマテウスがが前線左へロングキック、木村勇大が鹿島の植田直通と競り合ったこぼれ球は柴崎岳のところに飛んでいき、そのまま収められて攻守が入れ替わる…と思った瞬間に、齋藤は足を止めなかった。
そのまま猛然と迫って柴崎より前に出て突き進むと、左足でシュート。ゴール右へと向かっていって、GK早川友基が触ったものの、こぼれたところを山見大登が蹴り込んだ。
「ボランチはやっぱりセカンドボールを拾うことが大事なので、そこはずっと意識してやっている中で、いい形でシュートまでいけました」
齋藤は胸を張る。
「セカンドボールの予測は自分のストロング。ボランチとして大事な能力だと思うので、常に狙ってます」
奪ってからシュートへの流れもスムーズだった。
「飛び込んだ勢いでシュートまで持っていけるかなとは思ってました。止めたところでパスにするかシュートにするかの判断は少しありましたけど、関川(郁万)選手の股を抜けるコースが見えたんです。だから思い切って打ったんですけど、山見がいい予測をしてくれたので、点につながったかなと思います」
その一瞬に「見えて」いたのだ。そしてもちろん、シュートの技術が優れていたからこその「アシスト」だ。
「低い弾道で、でも、もしかしたら(ゴールの枠に)入っていないかもしれないですけど、際どいところに打てたのはよかったと思います。次は自分が点を取れるようにもっとスキルを高めていきたいなと思います」
このゴールへの伏線には「守備」がある。鹿島は球際に強く、個々のスピードとパワーをかけ合わせて攻め切る能力をチームとして備えている。対応のために準備した一つが、最終ラインの前のエリアを「締める」ことだった。
「ボランチは真ん中のゾーンを空けないことを意識していました。その分、前線の選手が守備をする強度や範囲が広くなるんですけど、前線の選手が頑張って走ってくれたので、なかなか崩れない守備につながったかなと思います」
鹿島の攻撃をじっくり受け止める時間が長く続いたが、最終ラインには5人が一線に並び、その前のセンターは齋藤と森田晃樹が見張ると、シャドーの山田楓喜と山見はボランチのラインまで下がってサイドにフタをした。そこで奪えば今度はシャドーは前線へと駆け上がって攻撃の起点を作る。齋藤が称えたように、本当に頑張って走っていた。
だから、2点目につながったボール奪取のシーンこそが、特に齋藤にとってはこの日の戦いの集大成だったのだ。
「ああいうところでボランチが取れないと、前線が頑張っている意味がない。そこは引き続きやっていきたいなと」
木村勇大、山見、山田楓が愚直に惜しみなく走り回って守っては攻める尽力を、形にするのがボランチの役目だというわけだ。
フィールドプレーヤーではチームで最も多い全28試合でピッチに立っている。ここ5試合はボランチのパートナーは森田か見木友哉だ。
「(森田)晃樹とのときは、僕が少し前で晃樹が後ろでゲームを作って、というイメージです。逆に、友哉と組むときは僕が後ろでさばいて友哉を前でプレーさせる感じ。役割が違うんです」
この日は森田とのコンビだった。2点目のシーンで躊躇なく前に出ていったのは、森田に後ろを任せることができたからこそのアクションでもあったのだ。「見えて」いたのはシュートコースばかりではなく、自分の役割や、その瞬間の戦況そのものでもあっただろう。
鈴木優磨との丁々発止のバトルで何度もやり合い、「本当は鈴木選手はすごくいい人だし、本当にうまいので楽しかった」と笑った。終盤には必死にボールを奪いに来る鹿島の選手をクルクルとターンを繰り返して慌てさせ、時間を空費させた。うまさと強さのハイブリッド型に進化して、周囲を引き立てることで自分も輝ける黒子になった。
東京Vのピッチのど真ん中ではいま、この背番号8が堂々と君臨している。