7月13日の明治安田J1リーグ第23節で、アルビレックス新潟はFC東京にアウェーで0-2の敗戦を喫した。キャプテンの堀米悠斗は深い反省と同時に、「評価できること」をきちんと口にした。良かった部分を言葉にすることで見えてくる改善への道があるからだ。

上写真=堀米悠斗が、昨年までの盟友、高宇洋と争う(写真◎J.LEAGUE)

■2024年7月13日 J1リーグ第23節(@国立/観衆57,885人)
FC東京 2-0 新潟
得点:(F)遠藤渓太、野澤零温

「評価できる部分が本当にたくさんあった」

 FC東京に0-2で敗れた試合直後のミーティングが、長くなった。

「(小野)裕二くんもチームに対して、もっとこうしなきゃいけない、こう取り組まなきゃいけない、ということをしゃべって、それに対してリキさん(松橋力蔵監督)も話して、今日はちょっと長めのミーティングでした」

 キャプテンの堀米悠斗によると、松橋監督はこんなことを語りかけたのだという。

「サッカーの本質的なところというか、技術を発揮するところを恐れてはいけない。チャレンジしなきゃいけない。相手がどれだけ寄せてこようと、自分の思ったところにボールを止めて、思ったところにボールを蹴る。それを見せる中で逆を取る。そんなに慌てる必要ないところでサイドチェンジを入れたけれど、それって本当に有効なのか。その判断の質を含めて、もっと怖がらずにやらなければいけない。ハーフタイムにも話がありましたけど、ボールを欲しがらなきゃいけない。まずは全員が、おとりになるために走るんじゃなくて、本気で裏を取るために走った上で、ボール保持者がそれをおとりにするんだ、という話もありました。一人ひとりがこれだけ素晴らしい舞台でサッカーができることに幸せを感じて見せなきゃいけないですね。やっぱりプロなんで恐れずに。ミスしないようにとか、取られなきゃいい、じゃなくて、 そういう図太さみたいなところはもっとこのチームには必要なのかなと」

 振り返る言葉はどんどん熱を帯びていく。公式戦3連敗を喫したいま、チームを代表するプレーヤーとしての思いを隠さなかった。

「結果でしか評価されない世界ではあると思うので、いまサポーターの方に対して言い訳をすることはありません。覚悟を持って僕は試合に臨んだので、やっぱりもう口じゃないな、と。いまは結果で何を示せるかというところだと思うので、 次は必ずやってやろうっていう気持ちしかないですし。これだけの雰囲気を作ってくれたので、何も言うことはない。あとは僕たちがやるだけ。全員が本当にその覚悟を持って今日臨んでいたのか。選手だけじゃなく、スタッフももっとやれることがあるんじゃないか、というのは、自分自身に問いかける必要があるかなと思います」

 自分たちをそう厳しく見つめながらも、堀米が下を向かないのは、この黒星が「惨敗」だったわけではないからだ。

「流れを90分全体で通して見れば、評価できる部分は本当にたくさんあったと思います。だから、チームとしての方向性は間違いない」

 そう断言して、勝つために必要な「要素」が散りばめられていたことを強調する。

「相手の縦パスがボールの奪いどころだとスカウティングしていて、思い切って迷いなくつぶしにいくことが今節の課題でした。(1-6で敗れた天皇杯3回戦の)長崎戦では迷いながら守備をして、結局ずるずる下がっていく展開でした。だから人をしっかり決めて迷わず行こうというのはポイントだったので、奪えるシーンは多かったと思います」

 相手がスイッチを入れてくる縦パスを引っ掛ければ、逆襲のスタートにできる。それが「評価できる」ことの一つ。

「攻撃も左はすごくスムーズに前進できている感覚はあったので、そこで攻めきるのか、あるいは意図をもって左に相手の目線を集めておいて右で勝負させるのかというところは、もう少し全員が共有できれば、もっと有効なサイドチェンジが出せるんじゃないかな」

 2つ目が左サイドの好連係。サイドバックの堀米とサイドハーフの谷口海斗の関係性を軸に、堀米から最前線の長倉幹樹へ、あるいはトップ下の長谷川元希へとボールを差し込んでリズムができた。

 その象徴的なプレーが、3つ目。

「元希の動き出しはこの試合ですごく大事にしようと思っていて、何度も前半からいいアクションを起こし続けてくれました。長倉もそう。あの瞬間は長谷川でしたけど、彼はアウトサイドでのスルーパスが好きなので、元希に出すならアウトだという判断というかアイディアが浮かんだんです。理想はもうちょっと滞空時間を出しながらのパスだったけれど、結果的にはいいところに落とせました。僕自身は今日やっててすごく楽しかったですね」

 あの瞬間、というのは、58分の鮮やかなスルーパスのこと。GK阿部航斗からのパスを受けてから左足のアウトサイドで回転をかけて左前の長谷川元希へ送り、フィニッシュに導いている。

 もちろんこれも、長谷川元希が決めていれば…というシーンだったが、それでも特に後半は何もできなかったわけではないという確かな感触があるから、迷いはない。

「本当に悔しい負けですけど、良かった部分、改善できた部分にしっかり目を向けて、冷静にゲームを見つめることが大事だと思います」

 負けがこむととかく感情的に振り返ったり、悪かった部分にばかり目を向けがちになる。そうやってネガティブに見つめることが必ずしも是であるわけではなく、重すぎる内省によって、確かにそこにある「良かった部分」まで放棄する必要はない、ということだ。

 それを証明できるのは、次のセレッソ大阪戦ということになる。