5月26日の明治安田J1リーグ第16節で、FC町田ゼルビアが浦和レッズに競り勝った。この試合で今季2試合目の先発となったのが下田北斗。最後にPKを蹴り込んで白星をもぎ取ったが、そこにはなかなか試合に出られない者の思いがあった。

上写真=下田北斗が90+6分にPKを決めて雄叫び!(写真◎J.LEAGUE)

■2024年5月26日 J1リーグ第16節(@埼玉/観衆39,406人)
浦和 1-2 町田
得点:(浦)伊藤敦樹
  (町)平河 悠、下田北斗

「代表」としての意地

 FC町田ゼルビアが浦和レッズから勝利をもぎ取った一発は、下田北斗の左足から生まれた。ナ・サンホの抜け出しから手に入れた90+6分のPK。自慢の利き足を強烈に振ってゴール右に突き刺した。

 そのPKに至るまでの話。「彼が出るときはPKは彼に任せる」というのが黒田剛監督の方針だというが、当の下田は黒田監督に、足がつっているのだけれど大丈夫か、と聞いたという。

「なぜか蹴らせてもらってるんですけど、もっと蹴りたい人、たぶんフォワードの選手はそう思っているので、そういった選手たちが蹴ってもいいのかなと。 あとは、足がつっていたのでそれでもオレでいいのかなと思って一応聞いたんです。それでもいけるだろ、って感じだったから、任せてもらったからには責任を持って絶対に決めてやろうと」

 黒田監督は「弱気なことを言ってきましたけど」と笑いながら、「水をごくっと一杯飲んで、深呼吸すれば大丈夫」と送り出した。

 その通り、下田はけいれんする足に渾身の力を込めて力強く蹴り込んだ。

 今季は仙頭啓矢と柴戸海のボランチコンビが、町田のミッドフィールドを頼もしく支えている。ただこの日は、柴戸が浦和からの期限付き移籍のため契約の問題で出場できず、下田がピッチの中央に陣取った。先発も、フル出場もまだ2試合目だ。

「いままでもフロンターレのときに出られない時期がありましたし、出たときに何ができるかが選手として試されている価値だと思うんです。前に出たときも勝ちましたし、今日も苦しいながらも勝てたので、そういったときに何ができるかは意識してるところです。それは僕だけじゃなくて、出られない選手はまだたくさんいて、そういった選手とみんなで厳しいトレーニングをしています。僕はたまたま出て、その代表というか、そういった人の気持ちも自分なりに考えながらやってます」

 好調を持続するチームにあって、ピッチに立てない選手が何をするか。外からは見えないその日常を、下田が埼玉スタジアムで示してみせた。

「誰が出てもしっかりチームの軸を全員が共有してピッチで表現していくのは、すごく大事なこと。川崎は川崎で攻撃的なサッカーでぶれないところがあり、町田は町田で全員でハードワークして、 みんなで立ち向かっていって、少ないチャンスも仕留めるし、粘り強く戦っていく。方向性は違いますけど、ぶれないところ、勝利を求めていくところは一緒なのかなと思います」

 下田が川崎Fに所属していたのは2018年から3シーズン。そのうち18年と20年は優勝している。いわば黄金期のあのチームと同じ空気を、下田自身が醸し出している、

 その意味で、この背番号18が2024年の町田というチームを象徴する存在なのかもしれない。