上写真=下田北斗が渾身のPKで決勝点!(写真◎J.LEAGUE)
■2024年5月26日 J1リーグ第16節(@埼玉/観衆39,406人)
浦和 1-2 町田
得点:(浦)伊藤敦樹
(町)平河 悠、下田北斗
ナ・サンホが抜け出してPKゲット
首位に立つFC町田ゼルビアの「強さ」も、90分間、常に続くというわけではない。
いつもの通り、キックオフからオ・セフンと藤尾翔太の2トップがパワーとスピードで猛烈にプレス、周囲が呼応して浦和レッズのボールを囲い込んだ。その結果、局所で激しいぶつかり合いが次々に発生して、早々と荒れ模様になった。ただ、20分過ぎあたりから2トップのテンポが格段に落ち、35分に仙頭啓矢がイエローカードを受けると、猛々しさが鳴りを潜めていった。
浦和が工夫をこらしたことも影響は大きいだろう。システム的に相手のボランチに対面するインサイドハーフの伊藤敦樹と安居海渡が少しポジションを下げてビルドアップの出口を増やすことで、左右に揺さぶって町田のプレスの効きを甘くした。
いわば、浦和は前半の45分をたっぷり使って町田のプレスの矢印を立ち位置で折ることに成功した。そうなると後半は、風上に立った浦和がどうやって矢印を「作る」のか、あるいは町田がパワーを取り戻すのかが焦点になった。
後半開始早々に先に結果を手にしたのは町田。52分、左からのクロスに平河悠が抜け出してシュート、GK西川周作に触られたがこぼれて、そのまま平河が押し込んだ。すると2分後、今度は浦和が逆襲。右から前田直輝が中央へ、安居海渡と石原広教がヘッドでつないで裏に落とし、走り込んだ伊藤敦樹がダイレクトで蹴り込んだ。
だが、この2つのシーンを除いては、ほとんどの時間でにらみ合いが続いた。ミッチェル・デューク、エリキと2トップを入れ替えた町田はそのフレッシュさを生かしながら押し込んでいき、浦和も左ウイングに入った武田英寿が数多くボールを触ってリズムを変え、前線深くに運んでいくが、どちらも決定機には結びつかなかった。
だが、最後にスコアを動かしたのは首位チームだ。平河のパスで抜け出したナ・サンホがペナルティーエリア内でアレクサンダー・ショルツに倒されてPKを獲得。これを下田北斗が力強くゴール右にたたき込んで、ついに突き放した。
強さが90分ずっと連続するわけではなかったが、うまくマネージしながら、最後の最後の一瞬に勝ち切る。それを、黒田剛監督はこう表現する。
「勝ち急がず取り急がず、ベクトルを合わせてたたみかけていこう。焦れずに最後までいけば、必ず良いことがある。そう言って、それを信じて走ってくれた」
そこに町田の強さがあった。