Jリーグは31年前の1993年5月15日にスタートし、同日は「Jリーグの日」とされる。今年はJ1リーグの第14節が開催された。ここでは2試合組まれたオリジナル10対決のうち、東京・味の素スタジアムで行われた「東京ヴェルディ対ガンバ大阪」について綴る(もう1試合はサンフレッチェ広島対鹿島アントラーズ)。

上写真=激しく争う東京Vの山田楓喜とG大阪の宇佐美貴史(写真◎J.LEAGUE)

チームをけん引した両チームの「7番」

「Jリーグの日」である5月15日、J1リーグ第14節が行われ、味の素スタジアムでは、オリジナル10同士の対戦が実現した。J1では16年ぶりとなる東京ヴェルディ対ガンバ大阪だ。結果は0−0。一度もネットは揺れることなく、スコアレスドローに終わった。

 終始ボールを握ったのは東京Vで、シュートを14本打って枠内に11本飛ばした(DAZN調べ)。にもかかわらず、ネットを揺するには至らなかった。決定機と呼べるほどのチャンスは少なく、25分のCKからの綱島悠斗のヘディングシュート、83分のこの日一番の展開から森田晃樹が放ったシュートはともにGK一森純の正面を突いた。

 これに対してG大阪はわずか4本のシュートで枠内は2本(同)、決定機と言えるのは終了間際の86分に相手のクリアがこぼれたところを拾った山下諒也が折り返し、そのこぼれを倉田秋がシュートしたシーンくらい。これもDF林尚輝の懸命のブロックに阻まれた。

 G大阪は、ダニエル・ポヤトス監督も話していたが、ウェルトン、ファン・アラーノ、山田康太といった攻撃で違いを作れる選手たちが不在だったことが痛手だった。

 一方、東京Vも城福浩監督が「言い訳にしたくないが」と断ったうえで「われわれは中2日、相手は中3日で、その違いはよく知られるところ」と語ったように、コンディションの面では厳しい状況にあった。それでも今シーズンのチームの持ち味である運動量は落とさず、試合を優位に進めていた。決定機を作り切れなかったのは「もうひとつ揺さぶることができなかった」(城福監督)ためで、その点では確かに連戦の疲れも影響していたのだろう。

 両チームがそれぞれの事情で本来の力を発揮したとは言い難い試合だったのは間違いない。ただし、見どころがなかったわけではない。まず、両チームのキャプテンにして、奇しくも同じ「7番」を背負う2人のプレーだ。東京Vの森田とG大阪の宇佐美貴史はともにチームを象徴する存在感を示した。

 森田は激戦だった前節の鹿島アントラーズ戦(0-3を3-3に追い付いた)をはじめ、ここまでほとんどの試合でフル出場しながら、この日もフィールド狭しと走り周り、必要なところに顔を出して攻守に積極的に関わった。巧みなコントロールとターンでボールを失わず、的確な配球を見せたかと思えば、前述のように攻め上がって際どいシュートや、好クロスも放った。テクニックやアイディア、運動量は代表クラスのそれ。今後も東京Vをけん引していく存在だろう。

 宇佐美は今季、復活してG大阪の攻撃を支えている。この日はチームとしてなかなかボールを握れなかったが、宇佐美にボールが渡ったときには何かが起きるのではないか、と期待させた。セットプレーはすべて 担ってFKから際どいシュートを放ち、CKではゴールに迫るクロスを送っている。その存在感は際立っていた。

 ここまでG大阪はリーグ最少タイの10失点と堅守が光るが、反面、得点も最少タイの11と、これまでのクラブのイメージや本来目指すところとはかけ離れた数字を残す。だが、攻撃のタレントが復活してくれば宇佐美のリードもあり、得点力が向上するはずだ。現在6位とまずまずの順位を維持しており、今後、優勝争いに絡んでいく可能性は十分ある。

 東京Vも、現在11位ながら、ここまで11戦無敗。城福監督は「引き分けが多くて喜べない。勝ちに持っていけた試合がいくつもあった」と勝ちきれない部分にフォーカスするが、負けない事実を重ねており、さらなる向上にしっかり意識を向けている。

 結果だけを見れば、スコアレスであり、内容に乏しい試合ということもできるが、同時に連戦の中、両チームがともに今後へ向けて可能性を示した試合でもあった。

文◎国吉好弘

東京Vを攻守両面でけん引する森田晃樹(写真◎J.LEAGUE)