伊藤敦樹がついに今季リーグ戦初ゴールだ! 5月6日の明治安田J1リーグ第12節、横浜F・マリノスを迎えたホームゲームで先制ゴール、さらには追加点も挙げて1号と2号を両方決めてみせた。しかも、どちらも逆足となる左足で奪ったもの。チームを勝利に導いて、苦しんだ大型MFがいよいよ本領を発揮した。

上写真=伊藤敦樹が「気持ち」で2発を決めて、勝利に導いた(写真◎J.LEAGUE)

■2024年5月6日 J1リーグ第12節(@埼玉/観衆40,579人)
浦和 2-1 横浜FM
得点:(浦)伊藤敦樹2
   (横)加藤聖

「監督に結果で恩返しを」

「いろいろ考えちゃった」1点目、「シュートコースが見えた」2点目。伊藤敦樹が今季リーグ戦初ゴールと2点目を鮮やかに決めてみせた。しかも、利き足とは逆の左足でだ。

 1点目は42分。序盤から絶好調だった左サイドから崩し、中島翔哉が中に入ってくるところで最前線に飛び出した。そこに最高のパスが届く。右足で収めて左足でたたいた。GKの股下を通って気持ちよくゴールネットを揺らした。

 その軽快さからは予想できなかったが、「緊張した」のだという。

「そうなんです、もうだいぶ緊張しました。あれはマジでいろいろ考えちゃったんで、もうほんと、入ってよかったです。ホッとしました。もう気持ちですね」

 ペア・マティアス・ヘグモ監督が就任し、4-3-3のアンカーシステムを採用した今季、伊藤に与えられたポジションは右のインサイドハーフだった。これまでのボランチに比べると、立ち位置が前。ダイナミックにDFラインを破って走り抜ける特徴を生かしてきたが、今季はここまでノーゴールと苦しんだ。チャンスは増えたが、決められない。

「昨日、コーチの人とも話して、チャンスに絡めることはできていますし、だからこそ逆に外すシーンが目立つわけで、そこは気にしないでやり続けるしかないね、と。あのシーンも悔しかったですけど、気にせずしっかり切り替えることができたので、大丈夫でした」

 あのシーン、とは、15分のこと。渡邊凌磨の左CKが逆サイドに流れてきて、フリーで右足で押し込もうとしたが、シュートは浮いてしまった。

 だからこそ先制ゴールの瞬間は緊張に襲われもしたわけだが、これで吹っ切れた。2点目ではコースがしっかり見えていたのがその証拠だ。サミュエル・グスタフソンの縦パスを受けてそのまま持ち運び、プレッシャーがなかったからペナルティーエリアの外から左足を振った。ゴール左にずばっと飛び込んだ。

「いろいろとパスコースも見ながら運んでいって、モト(大久保智明)がいい形で斜めに走ってくれて、それで相手も連れていってくれたのでもう一つ運ぶことができました。シュートコースも見えましたし、相手もいい感じにブラインドになってくれて、いいところに打てたのでよかったです」

 左に中島翔哉がフリーでいて、右にはチアゴ・サンタナも。さらに目の前をすり抜けるように大久保が走っていった。そんな状況をすべて把握した上で選んだ冷静なフィニッシュだった。

「個人としてはなかなか結果が出ないことに対しての歯がゆさだったり、 悔しい思いの方が強かった。それでも試合に使ってくれる監督に結果で恩返ししたかったですし、チームも勝利に導くことができた。毎試合チームを勝利に導きたいと思ってやってて、それがなかなかできていなかったから」

 マリウス・ホイブラーテン、サミュエル・グスタフソン、渡邊凌磨とともに、12試合すべてに先発起用されているフィールドプレーヤー4人のうちの一人。監督の信頼の厚さは揺るぎない。

 だから、小さなミスで悔やむより、そのプレースタイルと同じように、心も前へ前へ大胆に突き進む方が、伊藤らしくていい。