東京ヴェルディは13日、東京・味の素スタジアムでFC東京と対戦した。16年ぶりにJ1の舞台で実現した東京ダービーだったが、東京Vは前半に2点をリードしながら後半に追いつかれて、勝ち切ることができなかった。魅力あるサッカーを見せながら終盤に失点するケースが多いのはなぜなのか?

城福監督の采配と反省

東京ヴェルディの監督としてJ1の舞台で16年ぶりに東京ダービーを戦った城福浩監督(写真◎J.LEAGUE)

 若い選手が多く、ゲーム中の駆け引きの面で未熟であることは確かで、キャプテンの森田晃樹が「相手が10人というところで、緩みみたいなものもあったと思います」と振り返っていた。有利な状況での戦い方を実践できず、ミスから失点して悪い流れになっても立て直せなかった。選手の経験不足と言えばそれまでだが、城福監督の経験を考えれば、その采配も重要なカギだったのは間違いない。

 1点差に追い上げられた時点で見木友哉を松橋優安に、染野唯月を綱島悠斗に交代させたが(79分)、全体を引き締める強いメッセージを送れていたのかどうか。城福監督は同点ゴールのきっかけとなったスローインを簡単に相手のゴールキックにしてしまったシーンを悔やんでいたが、それは選手に対してというよりも自身に向けたものだったのだろう。

 ハーフタイムの指示についても以下のように説明している。

「0-0と同じような形でやろうと、守備がまず緩くならないように。もちろんしっかり幅を取って攻めていけば3点目を取れるチャンスがあるので、そこはゲームを終わらせにいこうと伝えました。非常に軽率なミスから1点を献上して、さらにバタバタしてしまった展開は、このチームはいろいろなものをまだまだ積み上げなければいけない状況ということ。ハーフタイムの指示も含めて、自分に何ができたかということは振り返りたいと思います」

 今回も勝ち切れなかったという事実について、指揮官は自らの采配にも目を向けていた。

 谷口の負傷の程度は分からないが、ハムストリングを押さえていたことからして、復帰までしばらく時間が必要かもしれない。となればディフェンスラインの再編は急務。リードした状況での戦い方についてもフォーカスしながら、この窮地を成長につなげるしかない。

 見事なシュートを決めた染野がエースとして覚醒した感があり、森田のテクニックとアイディアにはさらに磨きがかかった印象を受ける。見木や木村勇大、途中出場が多いながら山見大登ら新戦力も現ヴェルディのプレーに溶け込んで、それぞれの良さを発揮できている。攻撃に関しては明るい材料も多い。土壇場で追いつかれる、まるで敗戦のような引き分けだったが、悲観することばかりではないはずだ。

 鬼気迫るほどの情熱を持つ城福監督の存在がチームにポジティブな効果をもたらしているのは間違いないが、状況次第ながら、時に切羽詰まったものではなく余裕を感じさせるような采配を見せてくれれば、とも思う。というのも成長著しい選手たちの力と、指揮官の采配が噛み合えば、このチームには、さらに伸びる可能性があるからだ。

文◎国吉好弘