アルビレックス新潟が敵地に乗り込んで東京ヴェルディと戦った3月16日のJ1第4節。もう少しで勝てそうだったのだが、最後に引き分けに持ち込まれた。そんな拮抗した展開を演出したのは、GK小島亨介の存在。ファインセーブを連発して最後尾からチームを支えた。

上写真=小島亨介は冷静なセーブで緊張感ある試合を演出した(写真◎J.LEAGUE)

■2024年3月16日 J1リーグ第4節(@味スタ/観衆17,055人)
東京V 2-2 新潟
得点:(東)山田楓喜、翁長 聖
   (新)谷口海斗、長倉幹樹

「自分としても受け止めないと」

 アルビレックス新潟はどうして勝てなかったのか。

 8分にFKを直接決められたが、谷口海斗がCKからヘッドで流し込んで32分に同点とすると、69分には相手のミスをかっさらった長倉幹樹が決めて逆転に成功した。なおも攻めの姿勢は失わなかったのだが、一瞬の空白ができて追いつかれたのが、90分のこと。

 試合直後のミックスゾーンでは、GK小島亨介が「まだ映像でも振り返っていないので分からないですけど」と断った上で、最後の失点の場面について改善の糸口を探していた。

「クロスから最後にファーにいってしまったところは、もう少しオーガナイズのところで未然に防ぐことができたのかなと思っています」

 新潟から見て左からクロスを送り込まれたところ、中央でボールに対して複数人でチャレンジしたがボールを流されたところ、逆サイドががら空きになったところと、それぞれで予防できる余地がなかったか、という意味だ。

「僕たちとしては、点が取れるのであれば取りにいくチームだと思っています。ただ、ゲーム状況において、終盤になれば序盤にやっているようなプレーとは異なるので、ボールの奪われ方は特に注意しないといけないと思います」

 ゲームの閉め方に大きな課題を残したわけだが、ともに譲らず攻め合って拮抗した展開になった、という文脈で振り返ると、やはり小島の存在は語り落とせない。

 22分、染野唯月との1対1を迎える大ピンチがあった。決められれば点差を2点に広げられる、いわば試合の潮目。しかし、一度下がりながらその瞬間に前ににじり出て正対し、冷静に体の中心で止めてみせた。

「ああいう場面は自分のストロングですし、本当に我慢して自分の周りに持っていくところは常に練習から意識してるので、それが出たと思います」

 ボールの方から吸い込まれていくようなシュートストップをそう表現したが、ビッグセーブはほかにもある。

 25分にカウンター気味に右に運ばれて、最後は見木友哉の強烈なシュートを浴びたが、これも落ち着いて弾いてみせた。39分にも左サイドに素早く運ばれてから、山越康平がDFと自分の間を通す鋭いセンタリングを送り込んできたが、これを読み切ってダイビング、パンチでクリアした。安定感は増すばかりだ。

 これがなければ、勝ち点はゼロだったかもしれない。ただ、ピンチを救ったことよりも、ピンチを救えなかったことの方がその頭に強く刻まれていく。

「結果的に2失点してしまっているのは、自分としても受け止めないといけない。それ以外のところではいいプレーが多かったので、なんとか1失点に抑えたまま味方の攻撃に期待するような形にはなって、終盤まで勝っていたので、そのまま勝ち切れれば、今日は本当に良かったと思えたんですけど」

 2つの失点を除けば、チームとしては納得のプレーだったという思いがある。松橋力蔵監督も「残念だがポジティブにとらえている」と内容には及第点を与えた。小島も同じ感触だ。

「内容自体は本当に悲観するものではなくて、むしろ守備でも前半からかなりハイプレスで連動できていましたし、攻撃のところもうまく相手を見ながらはがすシーンも多かった」

 だからこそ、なのだ。

「ただ、そういういいプレーをしていても、やっぱり結果的に得点を決めたり、あるいは無失点に抑えるというところにつながっていかないと、試合は勝てません。チームで戦いながらも、やっぱり個人で打開するところ、個人で守るところで、もう少しその範囲を広げていくことで、よりチームとして脅威になると思うんです」

 それを体現し続けるのが、この守護神。

「チーム戦術にプラスして、並行しながら個人の質を高めていきたいと思っています」