サンフレッチェ広島で俊敏なアタッカーとして鳴らしてきた満田誠が、今季は開幕からボランチで生き生きとしている。3月2日のJ1第2節FC東京戦でも、バランスを見極める賢さと、自慢の攻撃力をスパークさせる大胆さを組み合わせて駆け回った。

上写真=満田誠が今季はボランチでプレー。スタミナとテクニックのハイブリッド型だ(写真◎J.LEAGUE)

■2024年3月2日 J1リーグ第1節(@味スタ/観衆32,274人)
FC東京 1-1 広島
 得点:(F)荒木遼太郎
    (広)大橋祐紀

強烈ミドルがゴールのきっかけに

 FC東京にアウェーで1-1のドロー。69分に先手を取りながら、2分後に追いつかれる展開で、満田誠に笑顔はない。

「押し込んでいるときにも相手はカウンターを狙っていますし、もうちょっと時間を作って攻めてもよかったのかな」

 前半は広島のスピーディーで直線的な攻撃が威力を見せた。相手のパスを引っ掛けては、前線の鋭い動き出しと、それを見逃さない中盤や最後尾からのパスでひっくり返して優勢だった。ただ、相手がその速さに慣れてくると、あちらも返す刀のごとくスピードで仕掛けてきて、そんな展開が繰り返されていった。広島のミヒャエル・スキッベ監督の言葉を借りれば、「こちらがチャンスを迎えれば、次はFC東京のチャンスになる。どちらが勝ってもおかしくない試合」である。

 ボランチのポジションに入った満田としては、そんなアップテンポな流れをうまく落ち着かせたかった。

「シンプルにクロスを上げるだけじゃなくて、そこで時間をかけて、もう少し崩してもよかったのかな、とは思いました」

 何かに急き立てられて、慌てふためいたわけではない。ただ、速く攻めるスタイルがそのままチャンスにつながっていたから、テンポを変えるまでには至らなかった。

 そんなふうに、満田は全体のバランスをよく観察していた。ボランチの役目として当然ではある。だがこの人は、昨年まで主に前線で駆け回り、鋭い出足で相手を混乱させてゴールを陥れてきた俊敏なアタッカーだったのだ。昨季も何度かプレーしていたとは言え、今年は開幕から2試合とも中盤のセンターを任されている。

「見える景色は全然違いますね。ボールを受ける位置もそうですし、そこで失っちゃいけないポジションだと思うので、受ける前も受けたあとも、前のバランスを見ながら、自分や川村(拓夢)選手がバランスを取りながら攻めないと相手を崩せない。逆に守備でも自分たちがバランスを取らないと間延びしてしまうので、そこを意識しながら、もうちょっと連係して声を出しながら高めていければいい」

 前後のバランスはもちろんだが、左右のバランスもまた重要だ。

 この日の広島は右に中野就斗、左に東俊希とワイドアタッカーを配置して、センターフォワードのピエロス・ソティリウ、シャドーストライカーの大橋祐紀と加藤陸次樹が関り、ボランチの満田と川村がサポートするというメカニズムが安定していた。その中で、満田はサイドに入ったボールに対して内側でパスの出口を作り、受けては中央に差し込んだり、逆サイドに振って相手の守備の矛先をかわしていった。そのテンポが心地よい。

 さらには、深く押し込んだあとのマイナスのエリアも主戦場になる。ソティリウ、大橋、加藤が迫力たっぷりにゴール前になだれ込むと、その後ろ側がぽっかり空く。そこにあえて遅れて入ってくると、見事にフリーになっている。

 この日のゴールもそうだ。69分に大橋がPKを決めたものだが、そのきっかけが満田の一連のプレーにあった。

 満田が左からの東のパスを受け、中央のソティリウに力強く差し込み、右に展開して中野が持つと、まんまとマイナスのスペースががら空きになった。そこに悠々と進入すると中野から折り返しのパスが来て、ダイレクトで30メートルほどの強烈なミドルシュートをお見舞いしたのだ。GK波多野豪に弾かれたが、これで得たCKを蹴り込むと、相手にハンドの反則があってPKを獲得、という流れだった。

「1本、シュートを打っていったような(上記の)シーンを、もうちょっと作っていければいいと思います」

 そのために、自分に求めるものがある。

「そこに関わっていくには、自分もどういうポジショニングだったり、どういう展開をしていけばいいのか、もっと工夫していかなければいけないのかなと」

 どんな工夫を施していくのか。楽しみが増していく。