上写真＝湘南のGK富居大樹にプレスを掛けて決勝ゴール。エリソンの一生懸命さが川崎Fに新たな活力を注入している（写真◎J.LEAGUE）
■2024年2月24日 J1リーグ第1節（@レモンS／観衆12,987人）
湘南 1-2 川崎F
得点：（湘）池田昌生
（川）脇坂泰斗、エリソン
エネルギーとパッション
ブラジルの名門、サンパウロFCからやってきたFWエリソンとは何者か。3戦連発という結果を見れば類稀なストライカーだと分かるが、そのプレーの特徴をずばり表現しているのは、エリソンの夫人のこの言葉。
「ピッチの中では本当に相手には嫌らしいプレーをする、相手に嫌がられるプレーヤーだよね」
そうやって高く「評価」してくれているのだと話すと、エリソンはうれしそうだ。
確かに嫌らしい。
2月24日のJ1開幕戦、湘南ベルマーレとの神奈川ダービーで叩き出した逆転ゴールは、その真骨頂である。1-1で迎えた56分、GK富居大樹にバックパスが入ったところに獰猛に寄せて奪うと、富居に後ろから手で引っ張られたのを気にする素振りもなく倒れもせずに、そのまま左足でていねいに無人のゴールに送り込んだ。これが決勝ゴールになった。
「自分としてもプレスをかけるのは好きですし、一瞬でもあきらめたくないという思いを常に持って試合に挑みます。それが相手にとって脅威になると思っていて、とにかく相手ディフェンス、ボランチに脅威をもたらすようなプレーをしていきたい」
鬼木達監督も、その一生懸命な姿勢に目を細める。
「彼のエネルギー、パッションはチームに勝利をもたらしてくれます。質の部分の要求はまだまだやってほしいところはありますが、彼の特徴を消さないようにしたいと思っています。どんな形でもゴールを取ったのはストライカーとして自信になるし、ストライカーが取ればチームにも自信になります」
我を通してボールを持ち過ぎることはない。受けたボールは少ないタッチでさばいて、仲間に預ける。そのあとに危険な場所に入り込んで、絶好のチャンスボールを待つ。それが川崎Fのテンポを生んでいる。守備でも労を惜しまずに走るから、この日の逆転ゴールも生まれた。少しも手を抜かないプレーの源は、献身的なハートである。
「もっともっとしっかり、地に足をつけて現状に満足せずに、自分の考えを曲げずに前進していきたい。自分は誰以上でもなく、誰以下でもないと思っています」
エリソンの生真面目さが川崎Fの新しい武器になる。
「チーム全員で勝ち取った勝利ですから、みんなにおめでとうと言いたい。いつも自分のゴールよりもチームの勝利が何より大切だと思っていますし、このまま進んでいきたい」
そうやって進んでいった先に、エリソンは、そして川崎Fはどんな景色を見ることができるだろうか。
幸いにもシーズンは始まったばかり。この男に注目する時間はまだまだたっぷりある。