この歳で一緒にできるのはなかなかない
――一度、下降すると、立て直せないチームが多いと思うのですが、再び上向かすことができた要因は何なのでしょうか。
水沼 耐えた、というのはあります（笑）
實藤 そうだよね（笑）
水沼 下り坂の時期は何度もありました。「ヤバいな」と感じたことも何度もありました。そこで踏ん張りましたね。このチームは練習でも背中で見せる選手が多いのですが、それを元々いた選手が示しながらやってきました。何かを任されてもアドバイスをもらいながらやるという、いままでにない真面目さがありました。選手たちの吸収したい気持ちがいい意味で働きましたね。
實藤 みんな素直な気持ちがありました。
水沼 その中で転げ落ちそうだったけど、前からいた選手がつなぎとめることができました。
――その意味では二人や喜田選手を含めた年長者が支えたシーズンだったと感じます。
實藤 宏太は負けた試合の次の練習で緩かったり、締まりがない選手がいると、嫌われ役になるのは勇気がいるのですが、チームのことを考えて指摘できる選手です。緩んでいるときに声を掛けてくれるのは宏太で、その後、周りがフォローしています。
水沼 本当にそうだよね。サネがいてくれるから言えるところはあります。「あとでフォローしといて」みたいな（笑）。自分が言ったあとに、言った選手にサネがそっと寄り添ってくれるのも見ています。そこはありがたいですね。もちろん僕も個別に話しますが、誰かが示さないといけませんし、示した僕たちにも責任があります。そこは僕らや経験のある選手がうまくフォローできたと思います。
――昔のサッカー選手が先輩であれば、もっと怖かったはずです。そこに比べると、二人ともとても優しいですよね。
水沼 僕が言うのもなんですが、僕たちが上で下の選手は楽だと思います。
實藤 伸び伸びやってるよね。大してなんも言われないしね（笑）。昔のF・マリノスの選手だったらヤバかったんじゃないの？
水沼 その雰囲気は時々、（飯倉）大樹くんから感じました（笑）。練習が終わったあとに、「前の俺だったらボロカス言ってるぞ。お前、大人だな」と言われます。大樹くんも大人になっているし、経験もあるので冷静に見ています。前のF・マリノスだったら……（笑）。
實藤 僕はあまり特定の選手と絡むのではなく、練習後のランニングで誰かが走っていたら喋りかけてますね。別にアドバイスはしませんが、ただ、普通にコミュニケーションを取っています。
水沼 普通、先輩だった緊張するよね。
實藤 緊張されていないのかな（笑）。
水沼 緊張する選手はいないかもね（笑）。
――最後に4年間、同じチームでやってきて、あらためてお互いどのようなチームメイトだと思っていますか。
水沼 F・マリノスに戻ってきて、毎年のように優勝争いをしたり、ACLに出た経験は何にも代えられない財産です。それを昔から知っているサネと経験できているのは良かったですね。ACLでもリーグ戦でもアシストをさせてもらいました。自分の同い年がどんどん引退したので、サネは学年は一つ上だけど、ほぼ同級生みたいなものです。 “ボス”の時代も知っていて、ケヴィン（・マスカット監督）に代わって優勝できました。お互いの特長も知りつつリスペクトしながら刺激し合えることが多かったです。お互い出られない試合も多かった中、へこたれずできたのはサネのお陰でもあるので、感謝しています。
實藤 ACLで僕は2点取っているのですが、2020年のカタールでも22年のベトナムでも同じシドニーFCを相手に、宏太からのアシストで決めることができました。一緒に出場している時間はそこまで長くなく、僕はゴールもそこまで多くないのですが、宏太とは縁があります。F・マリノスの4年間、毎日、練習で宏太が出し切る姿を見てきて、「俺もやらなきゃな」と思わせてくれる存在。人間なので、「今日はどうかな」と若干、思うときもあるのですが、宏太を見ていると、「体がキツイとは言えないな」と思わせてくれるぐらいチームを引っ張ってくれる存在です。僕より一つ下ですが、頼りになる存在でもあります。
水沼 ここまであっという間だったよね。
實藤 もう4年か、という感じだよね。この歳で一緒のチームでできるのはなかなかないよ。
水沼 2024年も、頑張りたいね。