川崎フロンターレのシーズンはまだ終わっていない。12月9日に柏レイソルと天皇杯決勝を戦うのだ。J1最終節でアウェーに乗り込んでサガン鳥栖を1-0で下した意味は大きいと脇坂泰斗。それが天皇杯優勝へと続くことを知っているからだ。

上写真=脇坂泰斗は鳥栖戦での勝利を天皇杯につなげるイメージを持っている(写真◎J.LEAGUE)

■2023年12月3日 J1第34節(@駅スタ/観衆13,302人)
鳥栖 0-1 川崎F
得点:(川)オウンゴール

堅く入るところと、大胆に攻めていくところのバランスを

「そのために、今日のゲームを勝ち切ることもできたので、また次に向けて、さらにギアを上げていければなと」

 今季リーグ最終戦、サガン鳥栖とのアウェーゲームに臨んだ川崎フロンターレの脇坂泰斗は、1-0でもぎ取った勝利を喜んだ。

 そして、「そのため」とはもちろん、天皇杯決勝のことだ。

 J1リーグ優勝を逃した一方で、天皇杯決勝を6日後に控え、グループステージ5連勝を遂げているAFCチャンピオンズリーグのグループステージ最終戦も残っている。だからこのチームにとっては、J1最終節はシーズンの「終わり」ではない。

 だからこそ、勝利でリーグを締めくくったことに大きな意味を見出している。0-0のまま進んだ87分にようやくオウンゴールで先制して、そのまま逃げ切った展開には「自分たちで仕留めたかった」と脇坂も苦笑い。だが「もちろん、結果として勝てたのはまず一つ良かったのかなと思います」と、勝ち点3を確保して8位に順位を上げた事実を重んじる。

 序盤は鳥栖のペースに引き込まれる形となったが、流れを変えたのは25分過ぎ。右の宮代大聖、左の瀬川祐輔のウイングをそのタイミングで入れ替えると、ボールの流動性が増した。ピッチの中でどう調整したのか。

「ゲーム自体が落ち着く前段階で、少し押し込まれたり行ったり来たりの展開でした。そこで、ベンチからウイングを入れ替えるという判断によって落ち着いたのもあると思います。その前からセンターバックのところで持つ時間ができていて、徐々に中盤の選手にも時間ができるようなボール回しができるようになったのは、変わったところじゃないかな」

 最終ラインにボールを持たせてもらえたことで、徐々に中盤にも空間が生まれた。そこに左右のウイングを入れ替えたことが重なって、それぞれのボールの受け方・離し方・動かし方に変化が生まれた。その相乗効果で時間を確保できた、という感覚だ。

 これで直近の公式戦は8勝2分けの10戦負けなしと圧倒的。シーズンが進むにつれて、右肩上がりでチーム力が高まってきた。天皇杯決勝の相手は、なんとかJ1残留にこぎつけた柏レイソル。その力関係を前に、周囲には楽観視も漂う。だが、脇坂は戒めるように言う。

「大会も違いますし、一発勝負は何が起こるかわからない。堅く入るところと、大胆に攻めていくところのバランスを見ながらやっていければなと思います」

 当たり前かもしれないが、そのバランスを間違わなければ勝つ自信があるというわけだ。

「フロンターレというクラブがタイトルを取り続けなければならない集団に成長したんだ、ということを証明する大会になればいい」

 昨年は無冠に終わった。その不甲斐なさやもどかしさ、悔しさは12月9日に晴らしにいく。新しいカップを掲げることができれば、脇坂にとっては背番号14としての初戴冠になる。