上写真＝井出遥也がJ1初ゴールでチームを勢いに乗せた（写真◎Getty Images）
■2023年10月21日 J1リーグ第30節（＠国立競技場/観衆53,444人）
神戸 3-1 鹿島
得点：（神）佐々木大樹2、井出遥也
（鹿）松村優太
「本当にさらなる自信に」
井出遥也の「1ゴール1アシスト」は、ヴィッセル神戸を鹿島アントラーズ戦の勝利に導いただけではなくて、間違いなく優勝へと突き進む大きな原動力になる。
J1で初めてとなる記念のゴールは、前半終了が近づく45分に生まれた。山口蛍の左へのサイドチェンジのボールに武藤嘉紀が追いついてキープするのを見て、井出はゴール前に入っていった。それを見逃さなかった武藤が右足のアウトサイドで意表を突くクロスを上げると、井出は正確にヘッドでゴール左へ。GK早川友基が右手で触ったものの勢いは止まらず、そのままゴールに転がり込んだ。これで2-0として、試合をさらに優位に進めることになった。
「ゴールを取れたことに対しては、本当にさらなる自信になると思います。ヴィッセルに来てずっと、クロスに入るヘディングやシュートの練習は続けてきた部分なので、それがやっとこういうタイミングで決まったのかなと思います」
今季から神戸に加わったものの、負傷もあってここまで出場13試合と、プレー機会が多かったとは言えない。前節の横浜F・マリノス戦は警告の累積で出場停止だった。
「この間、累積で試合に出られなかった分、 このアントラーズ戦に自分自身のすべてをかけていました。ここで自分が点を取ることで、このチームにまた違う怖さが出ればいいなとは思っていました」
怖さ、というフレーズは、図らずもこの日2ゴールを挙げている佐々木大樹も口にしていた。それこそ、ヴィッセル神戸というチームが頂点に立つために熱望していたいたものだろう。大迫勇也も武藤も報道陣に囲まれる井出の横を通るときに「今日のスター！」「たっぷり聞いてあげてくださいね」と冷やかしながら通り過ぎていったのは、それを表現したと認めたからだろう。
「1年間ずっと練習を続けてきたシーンだったし、コーチや選手がいつもシュート練習でアドバイスをくれたりという手助けがありました。だから、それがゴールにつながったことが本当によかったなと思います」
J1初ゴールが、これまでできなかったことができるようになった「新しい自分」との出会いの象徴だとすれば、アシストはさしずめ、これまでの自分を研ぎ澄ませた結果だと言えるかもしれない。
16分、左サイドでボールを受けると、一度縦を狙って対面の相手を動かしてから切り返し、食らいついてきたのを見てもう一度切り返してまたも縦にすり抜けた。そして左足でセンタリング。これを佐々木大樹がヘッドで流し込んだ。見事な先制アシストだ。このテクニックの切れ味が、まさに井出の得意技。
「あそこで最後にはがすというのはいままでも得意としていて、コンディションの面で痛みなくプレーできているので、それが出たのかな」
痛みさえなければ「平常運転」だというわけだ。なんと頼もしいことか。
「アシストやゴールという結果は、自分に一番足りない部分だったので、意識的にプレーしました」
だから、この「1ゴール1アシスト」は神戸の優勝ブーストになるかもしれない。残りは4試合。あといくつ、ゴールとアシストを重ねることができるだろうか。